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アミロイドβオリゴマーはマウスの海馬ニューロンにおいてGIRKチャネル活性の性別依存的な阻害を引き起こす
Amyloid-β oligomers trigger sex-dependent inhibition of GIRK channel activity in hippocampal neurons in mice
SCIENCE SIGNALING
1 Oct 2024 Vol 17, Issue 856
[DOI: 10.1126/scisignal.ado4132]
Haichang Luo1, Ezequiel Marron Fernandez de Velasco1, Benjamin Gansemer1, McKinzie Frederick1, Carolina Aguado2, Rafael Luján2, Stanley A. Thayer1, Kevin Wickman1, *
- 1 Department of Pharmacology, University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA.
- 2 Synaptic Structure Laboratory, Departmento de Ciencias Medicas, Instituto de Biomedicina, Facultad de Medicina, Universidad de Castilla-La Mancha, Campus Biosanitario, Albacete 02006, Spain.
- * Corresponding author. Email: wickm002@umn.edu
Editor's summary
アルツハイマー病(AD)の初期にはアミロイドβ(Aβ)沈着と神経興奮性亢進が認められ、げっ歯類ADモデルでは、抑制性Gタンパク質依存性K+(GIRK)チャネル活性の消失が関与している。Luoらは、Aβオリゴマーが海馬ニューロンにおいてGIRKチャネル活性を抑制するときの性別依存的な機構を同定した。この機構は、雄ADモデルマウスでのみ、認知障害の発現前に明らかであった一方、GIRKチャネル活性を遺伝学的に増強すると、高齢の雌雄マウスの認知能力が改善した。したがって、GIRKチャネルは初期AD病態の性別依存的なドライバーであると考えられるが、後期患者の治療における性別非依存的な標的候補となる可能性がある。—Leslie K. Ferrarelli
要約
アルツハイマー病(AD)は、アミロイドプラークと認知機能低下を特徴とする進行性の神経変性疾患であり、認知機能低下は可溶性オリゴマーアミロイドβ(oAβ)によって引き起こされると考えられている。ADのげっ歯類モデルでは、Gタンパク質依存性内向き整流性K+(GIRK、別名Kir3)チャネルの調節不全が関与している。今回われわれは、機構に関する知見を探索し、ADに関連するアミロイドの病態生理におけるGIRK依存性シグナル伝達の性別依存的な一面を明らかにした。合成oAβ1-42は、雄マウスの海馬ニューロンにおいてGIRK依存性シグナル伝達を抑制したが、雌マウスの海馬ニューロンでは抑制しなかった。この作用には細胞のプリオンタンパク質、受容体mGluR5、ホスホリパーゼPLA2によるアラキドン酸産生が必要であった。oAβは雄の海馬ニューロンでのみGIRKチャネル活性を抑制したが、oAβを海馬内に注入する、または海馬錐体ニューロンにおいてGIRKチャネル活性を遺伝学的に抑制すると、雌雄両性のマウスで記憶テストの成績が低下した。さらに、海馬錐体ニューロンにおいてGIRKチャネル活性を遺伝学的に増強すると、雌雄両性のマウスでoAβ誘発性の認知機能障害が阻止された。APP/PS1 ADモデルマウスでは、認知障害が検出される前に、雄マウスのみの海馬CA1錐体ニューロンにおいてGIRK依存性シグナル伝達が低下した。しかし、GIRKチャネル活性を増強すると、雌雄両性の高齢APP/PS1マウスで認知障害が回復した。したがって、GIRKチャネル活性の低下は、oAβ負荷が増大した雄マウスにおける認知障害の一因となる一方、GIRKチャネル活性の増強は、両性で治療効果を示す可能性がある。