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MAVSをより良く
Making MAVS better
SCIENCE SIGNALING
8 Oct 2024 Vol 17, Issue 857
[DOI: 10.1126/scisignal.adt5916]
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: jfoley@aaas.org
L. Bu, H. Wang, S. Zhang, Y. Zhang, M. Liu, Z. Zhang, X. Wu, Q. Jiang, L. Wang, W. Xie, M. He, Z. Zhou, C. Cheng, J. Guo, Targeting APT2 improves MAVS palmitoylation and antiviral innate immunity. Mol. Cell 84, 3513-3529 (2024).
アダプタータンパク質MAVSのパルミトイル化を促進すると抗ウイルス免疫応答が増強される。
細胞質パターン認識受容体RIG-Iは、ウイルス二本鎖RNAを認識し、ミトコンドリアアダプタータンパク質MAVSの凝集を刺激する。MAVSの凝集は、インターフェロン制御因子(IRF)転写因子の活性化を引き起こし、それがI型インターフェロン(IFN)と炎症性サイトカインをコードする遺伝子の発現を誘導する。I型IFNは、その後、抗ウイルス免疫応答にきわめて重要な因子をコードするIFN応答遺伝子(ISG)の発現を誘導する。MAVSがパルミトイル化など、ISGの発現に影響する広範に及ぶ多種多様な翻訳語修飾を受けることを考慮し、Buらは、細胞内代謝物がMAVS依存的抗ウイルス免疫を調節しているかどうかを調べた。I型IFNルシフェラーゼレポーターを発現したあとにセンダイウイルス(SeV)に感染させたHEK細胞の培養液中で500を超える代謝物質をスクリーニングしたところ、脂質パルミチン酸(PA)がRIG-I-MAVS-IRF3経路の活性化を促進し、それが、パルミトイルトランスフェラーゼで構成されるZDHHCファミリーの非特異的阻害薬2BPによって遮断されることが明らかにされた。水疱性口内炎ウイルス(VSV)に感染したHEK細胞をPAで処理すると、IRF3のリン酸化と活性化が促進され、ウイルス力価が減少した。生化学的研究では、PAがMAVSのCys46およびCys79のパルミトイル化を促進すること、これらのパルミトイル化がMAVSをミトコンドリア膜に適切に局在化させるために必要であり、MAVSの凝集を促進することが示された。MAVSのパルミトイル化を妨げると、RIG-Iとの相互作用が減少した。著者らは、PAによって亢進され、MAVSと会合して修飾する主要なパルミトイルトランスフェラーゼとして、ZDHHC24を同定した。様々な細胞株や初代培養マウス細胞でZDHHC24を欠損させると、MAVSのパルミトイル化が減少し、IRF3の活性化が減少し、ウイルス感染に応答するI型IFN応答が損なわれた。野生型マウスと比べて、Zdhhc24欠損マウスでは、I型IFN応答が減少し、ウイルス負荷が増加し、VSV感染時の生存率が低下した。著者らはさらに、MAVSと相互作用して脱パルミトイル化する主要なアシルタンパク質チオエステラーゼとしてAPT2を同定した。そして、APT2を過剰発現させると、ウイルスに誘導されるMAVSパルミトイル化が抑制された。VSV感染マウスをAPT2特異的阻害薬ML349で処置すると、MAVSのパルミトイル化、IRF3の活性化、I型IFNの産生が促進され、ウイルス負荷が減少した。まとめると、これらの知見は、MAVSのパルミトイル化がMAVSの凝集を促進し、MAVSの自然免疫応答を活性化する能力を増強することを示しており、この修飾によって治療的に抗ウイルス免疫を増強できる可能性を示唆するものである。