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ニューロンから抗ウイルスへ

Neurons go antiviral

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SCIENCE SIGNALING
29 Oct 2024 Vol 17, Issue 860
[DOI: 10.1126/scisignal.adu1029]

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.

Corresponding author. Email: abaek@aaas.org

Y. Hou, L. Sun, M. W. LaFleur, L. Huang, C. Lambden, P. I. Thakore, K. Geiger-Schuller, K. Kimura, L. Yan, Y. Zang, R. Tang, J. Shi, R. Barilla, L. Deng, A. Subramanian, A. Wallrapp, H. S. Choi, Y.-C. Kye, O. Ashenberg, G. Schiebinger, J. G. Doench, I. M. Chiu, A. Regev, A. H. Sharpe, V. K. Kuchroo, Neuropeptide signalling orchestrates T cell differentiation. Nature 10.1038/s41586-024-08049-w (2024).

神経ペプチドと受容体のペアがTH1細胞の分化を促進し、ウイルス感染に対する応答を増強する。

TH1、TH2、TH17およびTreg細胞などのヘルパーT細胞は、感染症に対する適応免疫応答、抗腫瘍免疫および自己免疫に重要である。これらの各種細胞系譜への分化、およびそれらの間のバランスは、厳密に調節されている。Houらは、感染した細胞からのシグナル伝達がヘルパーT細胞の運命をどのように決定できるのかを検討した。培養下の初代T細胞およびマウスLSK造血幹細胞を用いて、単一細胞RNAシーケンシングおよびCRISPR遺伝子スクリーニングを行った結果、TH1の分化に関連する因子が特定された。そのうちの1つが、TH1細胞の分化を促進する神経ペプチドCGRPに対する受容体の構成要素である「RAMP3」であった。CGRPは、TH1細胞の分化においてはサイトカイン・インターフェロンγ(IFN-γ)の産生を増強し、TH2細胞においてサイトカインであるインターロイキン-13(IL-13)およびIL-5の産生を減少させた。CGRPで処理した細胞のさらなる解析により、サイクリックアデノシン3',5'-一リン酸(cAMP)シグナル伝達経路のメンバーをコードする遺伝子発現が亢進していることが示された。T細胞を細胞透過性cAMPで処理した場合もTH1細胞からのIFN-γ産生が増加し、cAMPシグナル伝達を阻害するとCGRPのTH1細胞分化誘導能が消失した。cAMPの下流では、2つの転写因子であるリン酸化cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)および活性化転写因子3(ATF3)の存在量が増加した。培養マウスT細胞のCGRPによる分化の促進には、Atf3およびStat1の発現が必要であった。リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)のArmstrong株を感染させたマウスでは、CGRPがさらに多く含まれ、その脾臓では、T細胞の近傍ニューロンからCGRPが産生されていた。Ramp3-/-マウスではTH1細胞数が減少し、TH1応答が損なわれていた。本研究は、T細胞の分化に影響を及ぼし、抗ウイルス応答を促進するニューロンの役割ついて、光を当てるものとなった。

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