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De novoプリン合成酵素Adssl1は心筋細胞増殖と心臓再生を促進する

The de novo purine synthesis enzyme Adssl1 promotes cardiomyocyte proliferation and cardiac regeneration

Research Article

SCIENCE SIGNALING
29 Oct 2024 Vol 17, Issue 860
[DOI: 10.1126/scisignal.adn3285]

Zhigang Li1, 2, †, Xiaxi Dong1, 2, †, Lingfang Zhuang1, 2, Kangni Jia1, 2, Haomai Cheng1, 2, Hang Sun1, 2, Yuke Cui1, 2, Wenqi Ma1, 2, Keying Wei1, 2, Pupu Zhang1, 2, Hongyang Xie1, 2, Lei Yi1, 2, Zhiyong Chen1, 2, Lin Lu1, 2, Tao Li3, *, Ruiyan Zhang1, 2, *, Xiaoxiang Yan1, 2, *

  1. 1 Department of Cardiovascular Medicine, Ruijin Hospital, Shanghai Jiao Tong University School of Medicine, Shanghai 200025, PR China.
  2. 2 Institute of Cardiovascular Diseases, Shanghai Jiao Tong University School of Medicine, Shanghai 200025, PR China.
  3. 3 Department of Anesthesiology, Laboratory of Mitochondrial Metabolism and Perioperative Medicine, West China Hospital, Sichuan University, Chengdu 610041, PR China.
  4. * Corresponding author. Email: cardexyanxx@hotmail.com (X.Y.); zhangruiyan@263.net (R.Z.); scutaoli1981@scu.edu.cn (T.L.)
  5. These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

心筋細胞の増殖により完全な修復が可能になる新生児期の哺乳動物の心臓とは対照的に、成体哺乳動物の心臓の心筋細胞は、細胞周期への再進入を誘導されなければ再生を実現できない。増殖中のDNAおよびRNA合成の増強を支持するためには、プリンの可用性増加が必要であることから、Liらは、de novoプリン合成に不可欠な酵素であるAdssl1によって、心臓再生がどのような影響を受けるかを調べた。Adssl1を遺伝的に欠損させると、新生仔マウスの心臓で傷害後の心臓再生が制限された。一方、Adssl1を過剰発現させると、細胞周期再進入と心筋細胞の増殖が促進され、成体マウスにおいて心筋梗塞に起因する損傷および心機能障害が抑制された。この効果は、Adssl1の過剰発現により量が増加するプリンヌクレオシドであり、臨床で使用されている、イノシンの投与によって再現された。したがって、de novoプリン合成の増加は、心筋梗塞やその他の心臓への傷害の後の心臓再生を促進する潜在的な戦略として検討しうる。—Wei Wong

要約

新生児期の心臓が損傷を完全に修復するための増殖能力を有する期間は短く、この能力は成体になると失われる。心筋梗塞(MI)後に細胞周期再進入を再活性化することにより成体心筋細胞の増殖を誘導すると、心機能が改善する。De novoプリン合成は、細胞増殖のためのヌクレオチドの重要な供給源である。今回、われわれは、機能喪失および機能獲得の遺伝学的アプローチにより、筋特異的なde novoプリン合成酵素Adssl1の心臓再生における役割を検討した。マウス新生仔心臓においてAdssl1が欠失すると、心筋細胞の増殖が減少し、心尖部切除後の心臓再生が減退した。逆に、心筋細胞特異的にAdssl1が過剰発現すると、出生後の再生可能期間が延長し、MI後に強い細胞周期再進入が誘導されることにより、線維化瘢痕の大きさが縮小し、心機能が改善した。RNAシーケンシング解析では、Adssl1の過剰発現により、強力な脱分化と細胞周期進入が誘導されることが示唆された。さらに、LC-MS/MS分析では、Adssl1の過剰発現が、臨床で使用されているイノシンを含む、プリン代謝物の量の増加に関連することが示された。外因性イノシンの投与により、成体マウスにおいてMI後の心臓修復が促進された。分子レベルでは、Adssl1によって仲介されるプリン代謝物産生の増加により、増殖を促進するmTORC1経路の活性が高まった。われわれの研究は、心筋細胞増殖と心臓再生を支持するAdssl1の役割を特定するものである。

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