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TYK2がタウに及ぼす作用
TYK2 on tau
SCIENCE SIGNALING
19 Nov 2024 Vol 17, Issue 863
DOI: 10.1126/scisignal.adu6085
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: lferrare@aaas.org
J. Kim, B. Tadros, Y. H. Liang, Y. Kim, C. Lasagna-Reeves, J. Y. Sonn, D. C. Chung, B. Hyman, D. M. Holtzman, H. Y. Zoghbi, TYK2 regulates tau levels, phosphorylation and aggregation in a tauopathy mouse model. Nat. Neurosci. 10.1038/s41593-024-01777-2 (2024).
キナーゼTYK2はタンパク質を安定化させる修飾を介して病理的なタウ会合を促進する。
タウオパチーは、細胞の形状と動きを支える微小管(フィラメント)を安定化させることによって細胞機能を促進するタンパク質であるタウの異常な自己組織化が原因で生じる多様な神経変性疾患群である。病理的なタウ凝集は、さまざまなタンパク質修飾によって促進されるが、タウタンパク質の至る所に存在する少数のチロシン(Tyr)残基のリン酸化によることが多い。そのようなTyr残基のうちの一部のリン酸化を担うキナーゼは、すでに同定されている。リン酸化を担うキナーゼがまだ知られていない残基の1つがTyr29である。Tyr29への付加的な修飾――ニトロ化――は、タウタンパク質の微小管安定化能を妨げ、タウオパチーの患者や動物モデルから採取された脳組織内で検出される。Kimらは、以前に発表されたタウキナーゼのスクリーニングを追跡調査し、チロシンキナーゼ2(TYK2)によって媒介されるTyr29のリン酸化が、Tyr29のニトロ化と病理的なタウ凝集を促進することを明らかにした。ヒト神経芽細胞腫細胞とマウス脳において、TYK2をノックダウンすると総タウ量が減少した。TYK2は、タウに結合してTyr29をリン酸化し、それによって同残基のニトロ化が促進され、タウの分解が妨げられる。アルツハイマー病患者由来の死後脳組織中のTYK2量は、リン酸化タウ量と相関した。TYK2に依存したタウ凝集は、TYK2阻害薬で処理した細胞および非リン酸化型Tyr29変異タウを発現する細胞(これらの細胞でもFynに媒介される別のTyr残基のリン酸化によって凝集は促進される)において部分的に減少した。タウオパチーのマウスモデルにおいて、TYK2依存的にタウを安定化させると、他の部位のリン酸化による凝集感受性が高まったが、同マウス脳内のTyk2をノックダウンさせると、タウ凝集とプリオン様播種だけでなく、脳の記憶中枢領域内の炎症性神経膠症も減少した。TYK2阻害薬は乾癬の治療薬として認可されているが、これらの知見は、TYK2阻害薬がタウオパチーの進行を治療的に遅らせるための研究対象にもなりうることを示唆している。