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MYC駆動型高悪性度漿液性卵巣がんの治療へのコルホルシンダロパートのリパーパシング

Repurposing colforsin daropate to treat MYC-driven high-grade serous ovarian carcinomas

Research Article

SCIENCE SIGNALING
19 Nov 2024 Vol 17, Issue 863
[DOI: 10.1126/scisignal.ado8303]

Matthew J. Knarr1, Jamie Moon2, Priyanka Rawat1, Analisa DiFeo3, 4, David S. B. Hoon2, Ronny Drapkin1, 5, *

  1. 1 Penn Ovarian Cancer Research Center, Department of Obstetrics and Gynecology, University of Pennsylvania Perelman School of Medicine, Philadelphia, PA 19104, USA.
  2. 2 Department of Translational Molecular Medicine, Saint John's Cancer Institute, Providence Health Services, Santa Monica, CA 90404, USA.
  3. 3 Department of Pathology, University of Michigan, Ann Arbor, MI 48109, USA.
  4. 4 Department of Obstetrics and Gynecology, University of Michigan, Ann Arbor, MI 48109, USA.
  5. 5 Basser Center for BRCA , Abramson Cancer Center, University of Pennsylvania School of Medicine, Philadelphia, PA 19104, USA.
  6. * Corresponding author. Email: rdrapkin@pennmedicine.upenn.edu

Editor's summary

高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)は侵襲性が強く、効果が持続する治療法がない。フォルスコリンはがん細胞の増殖を抑制する能力をもつが、臨床で使用することができない。Knarrらは、フォルスコリン誘導体のコルホルシンダロパートが、HGSOC細胞において特異的に細胞死を誘導する一方、正常な卵管細胞または卵巣細胞では細胞死を誘導することはなく、MYCシグナル伝達を減弱することによってHGSOCの浸潤を部分的に阻害することを見出した。コルホルシンダロパートは、標準的な卵巣がんの化学療法薬であるシスプラチンと相乗的に作用し、マウスにおいてシスプラチン耐性腫瘍を再感受性化した。コルホルシンダロパートは急性心不全の治療薬としてすでに承認されているため、HGSOCの治療に再適用される可能性がある。—Leslie K. Ferrarelli

要約

高悪性度漿液性卵巣がん(HGSOC)は、女性にとってもっとも致命的ながんの1つであり、生存率が低く、早期発見のバイオマーカーがなく、再発率が高く、治療選択肢が少ない。サイクリックAMPシグナル伝達の活性化因子であるフォルスコリンは、HGSOCも含むいくつかのがんに対して抗がん活性を示すが、in vivoでの使用は限られている。その水溶性誘導体であるコルホルシンダロパートは、フォルスコリンと同じ作用機序をもち、急性心不全の治療に用いられている。今回われわれは、HGSOCの治療薬としてのコルホルシンダロパートの可能性を検討した。コルホルシンダロパートは、培養HGSOC細胞およびスフェロイドにおいて細胞周期停止とアポトーシスを誘導するが、不死化した非腫瘍形成性の卵管分泌細胞および卵巣表面上皮細胞における細胞傷害性はごくわずかであることが見出された。コルホルシンダロパートは、HGSOC細胞が、培養卵巣表面上皮細胞層に浸潤することも阻害した。In vivoでは、コルホルシンダロパートは腫瘍増殖を減少させ、シスプラチン(卵巣がん治療における標準的化学療法薬)と相乗効果を示し、皮下および腹腔内異種移植モデルにおいて宿主の生存を改善した。コルホルシンダロパートのこれらの抗腫瘍効果は、部分的に、HGSOCにおいて増加していることの多い腫瘍性タンパク質c-MYCの存在量および転写活性の低減を介するものであった。われわれの結果は、コルホルシンダロパートが、HGSOCの従来の治療薬と併用可能な、有望な治療薬である可能性があることを示している。

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