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胆嚢からの胆管機能の再建
Rebuilding duct work from the gallbladder
SCIENCE SIGNALING
4 Feb 2025 Vol 18, Issue 872
DOI: 10.1126/scisignal.adw3651
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: wwong@aaas.org
J. He, S. Li, Z. Yang, J. Ma, C. Qian, Z. Huang, L. Li, Y. Yang, J. Chen, Y. Sun, T. Zhao, L. Luo, Gallbladder-derived retinoic acid signalling drives reconstruction of the damaged intrahepatic biliary ducts. Nat. Cell Biol. 27, 39-47 (2025).
胆嚢由来の平滑筋細胞はレチノイン酸シグナル伝達を誘導して肝内胆管の修復を促進する。
胆汁は、脂肪の分解を助けるため肝臓で作られる液体であり、胆嚢に貯蔵されている。胆管上皮細胞(BEC)で裏打ちされている肝内胆管(IHBD)のネットワークが、総肝管によって胆嚢とつながれている肝臓から胆汁を運んでいる。Heらは、胆嚢由来の平滑筋細胞がレチノイン酸シグナル伝達を誘導して、IHBDの修復を促進していることを見いだした。IHBDネットワークは、化学的損傷が誘発されたマウス、および化学的損傷がIHBD内細胞に特異的に誘発されたゼブラフィッシュの幼魚または成魚において、実質的に再構成されていた。化学的損傷の誘発前に胆嚢摘出術(胆嚢の摘除)が施行されていた場合、この修復は生じなかった。ゼブラフィッシュの幼魚およびマウスでは、IHBDの損傷が、胆嚢から総肝管への平滑筋細胞の遊走を引き起こしていた。こうした平滑筋細胞の遊走が生じた後、総肝管内のBECが増殖し、これらBECがIHBD内の損傷部位に遊走し、IHBDが再建されていた。遊走する平滑筋細胞はレチノイン酸を産生し、レチノイン酸受容体および転写因子Sox9b(ゼブラフィッシュにおけるIHBDの発達に関与する)をコードする遺伝子が、総肝管のBECにおいて転写レベルで活性化されていた。ゼブラフィッシュおよびマウスにおけるレチノイン酸シグナル伝達の遺伝学的あるいは薬理学的阻害それぞれにより、またはゼブラフィッシュにおけるsox9bの変異により、損傷誘導性の総肝管BECの増殖およびIHBDの修復が阻害された。これらの結果は、胆嚢疾患の一般的な外科的治療である胆嚢摘出術は、IHBDネットワークが損傷された場合には肝機能障害および肝不全を引き起こすおそれがあることを示唆している。