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幹細胞の健康は母親の腸から
Stem cell health from mom’s gut
SCIENCE SIGNALING
18 Feb 2025 Vol 18, Issue 874
DOI: 10.1126/scisignal.adw6790
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org
H. Dang, P. Feng, S. Zhang, L. Peng, S. Xing, Y. Li, X. Wen, L. Zhou, S. Goswami, M. Xiao, N. Barker, P. Sansonetti, P. Kundu, Maternal gut microbiota influence stem cell function in offspring. Cell Stem Cell 32, 246-262.e8 (2025).
C. Huang, A. I. Lim, Pre-birth stem cell education: A gift from mother's bugs. Cell Stem Cell 32, 175-176 (2025).
母親の腸内の細菌が、子の幹細胞活性および長期的な腸と脳の健康を促進する。
腸内マイクロバイオームはヒトの生理機能において重要な役割を果たす。妊娠期間中に、母親の腸内マイクロバイオームの乱れによって、胎児の免疫および代謝の発達が変化する可能性がある。Dangらは、母親の腸内マイクロバイオームがさらに、胎児幹細胞の変容を介して、胎児の脳と腸の健康な発達および長期的な維持を促進することを見出した(HuangとLimによる記事参照)。著者らは、妊娠マウスに妊娠期間を通じて嫌気性菌株のアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)を投与した。これにより、A. muciniphila投与マウスの腸内ではラクトバチルス(Lactobacillaceae)科およびラクノスピラ(Lachnospiraceae)科の菌株の割合が増加し、血清中では関連する代謝シグネチャー(短鎖脂肪酸など)が増加した。溶媒を投与した対照マウスの仔と比較して、A. muciniphila投与マウスの仔には、脳の海馬におけるニューロン新生の増加と、腸における幹細胞プールの拡大を示すマーカーが認められた。A. muciniphila投与マウスの仔の腸陰窩は、対照マウスから生まれた仔の陰窩と比較して、大きなオルガノイドを形成した。脳と腸におけるこの幹細胞活性は、機構的ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)の活性化によって仲介されており、成体期および中齢期まで持続し、同時に不安の軽減、腸管透過性の低下、腸管修復能の向上をもたらした。一方、出生後にのみA. muciniphilaを投与された仔や、妊娠中に異なる嫌気性菌株を投与されたまたはA. muciniphilaを投与されたがそれ以外には多様なマイクロバイオームが欠けていた母親から生まれた仔では、これらの効果は認められなかった。以上の結果は、妊娠中の母親の複雑な腸内マイクロバイオームの重要性を高めるものである。