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温度感知
暖かいときは外に出る

Temperature Sensing
Going Outside When It’s Warm

Editor's Choice

Sci. Signal., 21 September 2010
Vol. 3, Issue 140, p. ec286
[DOI: 10.1126/scisignal.3140ec286]

Elizabeth M. Adler

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

温度センサーとして機能する内在性膜タンパク質は、温度の変化に対する適応応答を刺激することができる。たとえば、低温でヒスチジンキナーゼとして作用する枯草菌(Bacillus subtilis)DesK の自己リン酸化は、アシル化脂質のデサチュラーゼ(不飽和化酵素)をコードする遺伝子を転写活性化し、それによって膜流動性を高める不飽和脂肪酸の生成を もたらす。しかし、DesKはこの過程のスイッチを入れるタイミングを、どのようにして知るのであろうか?Cybulskiらは、置換システイン到達性評 価(substituted-cysteine accessibility method:SCAM)分析を用いて、膜トポロジーのバイオインフォマティクスにより予測される4つの膜貫通(TM)ヘリックスの存在を確認し、N末端 に5つ目の膜貫通ドメイン(TM1)を同定した。DesK欠失変異体がデサチュラーゼのプロモーターを含有するレポーター遺伝子を活性化する能力をin vivoで解析したところ、TM1がDesK活性の調節にとって不可欠であることがわかった。TM1を欠く変異体の活性は、調節をうけない細胞質C末端断 片(DesKC、触媒領域をもつ)の活性と同等であった。さらに、C末端TM5ドメインの最後の14残基に結合し、それによってDesKCに結合させた TM1の N末端ドメインの17残基から成るコンストラクトは、野生型DesKと同等の温度調節を示した。さらに、このコンストラクト[DesKCに結合した「最小 センサー領域」(MS、ハイブリッドTM1-TM5膜貫通領域)(MS-DesKC)]は、リポソームに組み込まれると、温度依存性の自己リン酸化を示し た。著者らは、MSの脂質‐水界面の近くに存在する親水性アミノ酸(Glu9、Lys10、Asn12) のクラスターが、分子の「沈んだブイ」として働き、高温では膜の縮小により水和されるが、低温では膜の膨張によって水分を失うではないかと仮定した。この 仮説に一致して、この親水性アミノ酸クラスターを疎水性アミノ酸で置換すると、デサチュラーゼ転写の低温依存性刺激が遮断されるのに対して、Lys10を 11位に移動させるか、11位にさらなるリジンを追加した場合には、MS-DesKC活性が上昇した。さらに、さまざまな長さの(炭素数20、16、 14)一価不飽和脂肪酸アシル鎖をもつホスファチジルコリンの二重層において、MS-DesKCの自己キナーゼ活性は鎖の長さとともに上昇した。したがっ て、DesKによる温度感知は、沈んだブイモチーフの水和を介する膜の厚さの温度依存性変化を監視するその能力に依存する、と著者らは提唱している。さら に、膜の厚さは、温度感受性のより一般的なシグナルとなる可能性があると推測している。

L. E. Cybulski, M. Martin, M. C. Mansilla, A. Fernandez, D. de Mendoza, Membrane thickness cue for cold sensing in a bacterium. Curr. Biol. 20, 1539-1544 (2010). [PubMed]

E. M. Adler, Going Outside When It's Warm. Sci. Signal. 3, ec286 (2010).

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