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アシル化によるRas局在化の調節が細胞内シグナルの伝播のひとつの様式を可能にする

Regulation of Ras Localization by Acylation Enables a Mode of Intracellular Signal Propagation

Research Article

Sci. Signal., 21 September 2010
Vol. 3, Issue 140, p. ra68
[DOI: 10.1126/scisignal.20001370]

Anna Lorentzen1,2, Ali Kinkhabwala3, Oliver Rocks1,4, Nachiket Vartak3, and Philippe I. H. Bastiaens1,3,5*

1 European Molecular Biology Laboratory, Meyerhofstrasse 1, 69117 Heidelberg, Germany.
2 Institute of Cancer Research, 237 Fulham Road, London SW3 6JB, UK.
3 Department of Systemic Cell Biology, Max Planck Institute of Molecular Physiology, Otto-Hahn-Strasse 11, 44227 Dortmund, Germany.
4 Samuel Lunenfeld Research Institute, Mount Sinai Hospital, 600 University Avenue, Toronto, Ontario, Canada M5G 1X5.
5 Technische Universitat Dortmund, Fachbereich Chemie, 44227 Dortmund, Germany.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: philippe.bastiaens@mpi-dortmund.mpg.de

要約:増殖因子による刺激は、細胞膜では一過性のH-Ras活性を生じさせるが、ゴルジ体では 持続性の活性を生じさせる。区画化されたH-Rasの活性は、2つの重複する調節ネットワークによって制御される。1つはグアノシン二リン酸‐グアノシン 三リン酸サイクル、もう1つはアシル化サイクルである。アシル化サイクルは、パルミトイル化されうるRasアイソフォームを細胞内の膜コンパートメント (区画)間で恒常的に輸送する。この2つのネットワークを脱共役させた後に、H-Ras活性の定量的イメージングを行なったところ、H-Ras活性は細胞 膜では調節されるがゴルジ体では調節されないことがわかった。それにもかかわらず、上皮増殖因子によって刺激されると、ゴルジ体のRas活性は、細胞膜の Ras活性と同様のパルス様プロファイルを示すだけでなく、その最初の刺激の後も活性は高いままであった。ゴルジ体におけるH-Ras活性のパルス様プロ ファイルは、細胞膜でのアシル化サイクルとH-Rasの調節を含む区画モデルによって説明されるが、ゴルジ体における持続性のH-Ras活性を説明するに は、もうひとつ別の区画でのH-Rasのアシル化を想定する必要があり、われわれはその区画が小胞体であることを実験的に確認した。このように、まるで無 線伝送のように恒常的に発生するRasの「搬送波」によって、細胞内の区画から区画へとRas活性が伝達されるという、これまで知られていなかった形態の シグナル伝播の根底には、Ras局在化の維持に加えて、アシル化サイクルが存在している。

A. Lorentzen, A. Kinkhabwala, O. Rocks, N. Vartak, P. I. H. Bastiaens, Regulation of Ras Localization by Acylation Enables a Mode of Intracellular Signal Propagation. Sci. Signal. 3, ra68 (2010).

[ 英文原文 ]

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