嗅覚
腐りかけの果実の水

Olfaction
Eau de Rotting Fruit

Editor's Choice

Sci. Signal., 2 November 2010
Vol. 3, Issue 146, p. ec334
[DOI: 10.1126/scisignal.3146ec334]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

 

騙し受粉(deceptive pollination)を利用する植物は、昆虫を欺いて、報酬を与えずに受粉を行わせる(Bentonの解説記事参照)。Stöklらは、Solomon’s lily(Arum palaestinum)が、8つのショウジョウバエの種をわなにかけることを見いだした。その中には、酵母を餌とし、利用可能であれば果実で繁殖するキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)とオナジショウジョウバエ(Drosophila simulans)が含まれた。Solomon’s lilyから出る揮発性化合物をガスクロマトグラフィーと触角電位検出を連結させた方法(GC-EAD)によって分析すると、6つの化合物が反復的で再現可能な触角応答をD. melanogasterD. simulansに おいて誘導することが明らかになった。two-choice assay(2肢選択アッセイ)において、これら6つの化合物を、Solomon’s lilyによって放出されるのと同様の比率で混合したところ、誘引性匂い刺激であるバナナおよびVector960(市販されているDrosophilaの餌)の2つと同程度の誘引性が認められた。これらの化合物は、発酵性酵母によって生成され、熟し過ぎた果実や腐りかけの果実に特徴的であるが、花束おいては比較的まれである。これらの化合物は、Vector960と同じ嗅覚受容体群を活性化させた。それらのうち、Or42bOr59bOr92aな どの嗅覚受容体のいくつかは、アルコール発酵基質の位置特定に関与し、ショウジョウバエ種全体でよく保存されている(その他の標的嗅覚受容体は進化的に多 岐にわたる)。このように、Solomon’s lilyが用いる騙し受粉機構は、ショウジョウバエが酵母の匂いを検出できるようにする嗅覚受容体を標的にしている。

J. Stökl, A. Strutz, A. Dafni, A. Svatos, J. Doubsky, M. Knaden, S. Sachse, B. S. Hansson, M. C. Stensmyr, A deceptive pollination system targeting drosophilids through olfactory mimicry of yeast. Curr. Biol. 20, 1846-1852 (2010). [PubMed]

R. Benton, Chemosensory ecology: Deceiving Drosophila. Curr. Biol. 20, R891-R893 (2010). [PubMed]

W. Wong, Eau de Rotting Fruit. Sci. Signal. 3, ec334 (2010).

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