• ホーム
  • 生化学 FKPB12によるRas輸送の調節

生化学
FKPB12によるRas輸送の調節

Biochemistry
Regulating Ras Trafficking with FKPB12

Editor's Choice

Sci. Signal., 25 January 2011
Vol. 4, Issue 157, p. ec23
[DOI: 10.1126/scisignal.4157ec23]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Rasファミリーのグアノシントリホスファターゼは増殖因子の下流のシグナル伝達において重要な働きをし、Rasをコードする遺伝子の突然変異は様々なタイプのがんと関係がある。Rasファミリーのタンパク質のすべてがプレニル化されており、H-Ras、N-RasおよびK-Ras4Aはゴルジ体でパルミトイル化も受け(ただしK-Ras4Bはパルミトイル化されない)、細胞膜で脱パルミトイル化される。実際に、タンパク質のパルミトイル化状態は細胞出の局在を制御しており、Rasのパルミトイル化によって細胞膜への輸送が促進され、脱パルミトイル化によってゴルジに戻る輸送が促進されてサイクルが再開される。Ahearnらは、プロリルイソメラーゼのFKBP12(このタンパク質に結合して阻害する免疫抑制剤FK506と結合できることにちなんでこの名称が付けられた。Liuらの文献を参照のこと)がパルミトイル化されたRasアイソフォームに結合して脱パルミトイル化を促進し、それによってゴルジ体への輸送を促進することを明らかにしている。この著者らは、H-Rasの C末端テールの10アミノ酸のみをもつ緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合コンストラクト(GFP-H-Ras10aaテール)は、全長のGFP標識H-Rasと比べてゴルジ体への局在化が抑制されているのに対して、H-Ras C末端テールの19アミノ酸をもつコンストラクト(GFP-H-Ras19aaテール)は全長のGFP標識H-Rasに近い分布を示すことに気づいた。GFP-H-Ras10aaテールはGFP-H-Ras19aaテールに比べてパルミトイル化が進んでいた。GFP-H-Ras19aaテールは、GFP-H-Ras10aaテールには存在しないプロリン残基をいくつか含んでいるので、著者らはプロリルイソメラーゼの阻害またはノックダウンの影響について調べ、FKPB12の活性が低下すると全長の H-RasおよびGFP-H-Ras19aaテールのパルミトイル化が特異的に亢進されること、およびこの亢進はプロリン179(Pro179)の存在に依存することを見いだした。標識タンパク質と内在性タンパク質を用いた免疫共沈降実験から、FKBP12はパルミトイル化されることが可能なRasアイソフォームにのみ結合すること、およびパルミトイル化される残基の変異によってこの相互作用が遮断されることが明らかになった。しかし、Pro179はこの相互作用に不要であった。FKBP12の阻害によってゴルジ体におけるGFP-H-Ras19aaテールまたは全長 H-Rasの量が低下し、H-Rasの活性化が亢進したが、K-Rasの活性化は亢進しなかった。さらに、ニューロン様細胞株(PC12細胞)にFK506を添加すると、恒常的活性化型H-RasとN-Rasのトランスフェクションに応答して形成される神経突起の割合が増大したが、K-Rasのトランスフェクションによっては増大しなかった。本研究によって、これまで不明であった、Rasの脱パルミトイル化におけるFKBP12のプロリルイソメラーゼ活性の役割が明らかになり、またプロリン指向性のコンフォメーション変化がその翻訳後プロセシングに影響することが示された。

I. M. Ahearn, F. D. Tsai, H. Court, M. Zhou, B. C. Jennings, M. Ahmed, N. Fehrenbacher, M. E. Linder, M. R. Philips, FKPB12 binds to acylated H-Ras and promotes depalmitoylation. Mol. Cell 41, 173-185 (2011). [PubMed]

J. O. Liu, D. V. Titov, Y. Dang, Q. He, Regulator of Ras depalmitoylation and retrograde trafficking: A new hat for FKBP. Mol. Cell 41, 131-133 (2011). [PubMed]

N. R. Gough, Regulating Ras Trafficking with FKPB12. Sci. Signal. 4, ec23 (2011).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2011年1月25日号

Editor's Choice

生化学
FKPB12によるRas輸送の調節

Research Article

脂肪細胞のRhoおよびRhoキナーゼ活性は、機械的伸張が関与する可能性のある肥満の悪循環に寄与する

低浸透圧条件下のラットバソプレッシンニューロンにおいて細胞体樹状突起からのAVP放出がV2受容体を介して果たす自己分泌機能

Perspectives

アセチル化、ユビキチン化及びヒストンコードによるエピジェネティックな遺伝におけるDNMT1量の制御

Meeting Reports

依存性受容体:基礎研究から薬剤開発まで

最新のEditor's Choice記事

2020年8月25日号

増殖因子とSARS-CoV-2

2020年8月18日号

向社会性ニューロリジン

2020年8月11日号

PHD3なしで運動改善

2020年8月4日号

好中球の群れを調整する

2020年7月28日号

RSVの侵入の促進