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感覚知覚
痛覚と嗅覚に必要な1つのチャネル

Sensory Perception
One Channel for Pain and Smell

Editor's Choice

Sci. Signal., 19 April 2011
Vol. 4, Issue 169, p. ec106
[DOI: 10.1126/scisignal.4169ec106]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

SCN9A遺伝子によってコードされるナトリウムチャネルNav1.7 を不活性化する変異は、チャネル病関連の無痛症を引き起こす(Waxman参照)。Weissらは、SCN9Aに機能喪失型変異が確認されている先天性無痛症患者3人を調べ、この患者らが40種類の臭気テストのいずれも検出できないことを見出した。ヒト嗅上皮の転写物解析およびタンパク質の免疫蛍光解析によって、嗅覚ニューロン(olfactory sensory neuron:OSN)にNav1.7が存在することが示された。嗅覚喪失の基本機構について調べるために、著者らは、OSNなどの嗅細胞のNav1.7を欠失させた組織特異的ノックアウトマウスを作製した。ノックアウト仔マウスは明らかな摂食不良が原因で体重が通常より軽く、成体マウスは誘引性の匂いにも不快な匂いにも反応できず、成体の雌マウスは巣から持ち出された仔マウスを連れ戻すこと(迷子の仔マウスの匂いに依存するタスク)ができなかった。嗅上皮切片の生物物理学的解析では、ノックアウトマウスのOSNは脱分極ステップまたは匂いの散布に応答して活動電位の正常な開始を示したが、刺激に対するシナプス後反応[OSNから僧帽/房飾(mitral/tufted:M/T)ニューロンへ]はノックアウトマウスで消失していた。電気生理学的解析と、野生型動物ではNav1.7がOSNのみに存在していてM/T細胞には存在しないという事実から、ノックアウトマウスのこの欠損がシナプス前の欠損であることが示唆された。このように、Nav1.7の機能喪失は疼痛シグナル伝達のみでなく、嗅覚をも乱し、2つの知覚欠損を引き起こす。

J. Weiss, M. Pyrski, E. Jacobi, B. Bufe, V. Willnecker, B. Schick, P. Zizzari, S. J. Gossage, C. A. Greer, T. Leinders-Zufall, C. G. Woods, J. N. Wood, F. Zufall, Loss-of-function mutations in sodium channel Nav1.7 cause anosmia. Nature 472, 186-190 (2011). [PubMed]

S. G. Waxman, Channelopathies have many faces. Nature 472, 173-174 (2011). [PubMed]

N. R. Gough, One Channel for Pain and Smell. Sci. Signal. 4, ec106 (2011).

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2011年4月19日号

Editor's Choice

感覚知覚
痛覚と嗅覚に必要な1つのチャネル

Research Article

抑制性ITAMシグナル伝達は、ホスファターゼSHP-1を用いて活性化受容体を捕らえ、極性を有する「インヒビソーム(Inhibisome)」クラスターを形成する

ERKが転写リプレッサーBlimp-1の発現とその後の形質細胞の分化を誘導する

Perspectives

ITAMはどのようにしてシグナル伝達を抑制するのか

形質細胞の分化におけるpERKによる BLIMPアップ

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