- ホーム
- アポトーシス死を免れる
アポトーシス
死を免れる
Apoptosis
Evading Death
Sci. Signal., 5 July 2011
Vol. 4, Issue 180, p. ec184
[DOI: 10.1126/scisignal.4180ec184]
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
Fas受容体は、リガンドが結合すると、細胞死誘導性シグナル伝達複合体(DISC)を組み立てる。このようなDISCの組立ての第一段階は、アダプタータンパク質であるFADD(Fas関連細胞死ドメインタンパク質)のFasへの動員である。これによって、イニシエーター・カスパーゼ(カスパーゼ8など)とエフェクター・カスパーゼ(カスパーゼ3や7など)の動員と活性化が誘導される。効果的なアポトーシスシグナル伝達にはFasのエンドサイトーシスも必要である。SwindallとBellisは、FasがST6Gal-I(糖タンパク質のN-グリカンにシアル酸を付加する糖転移酵素)の基質であることを見いだした。結腸がんなど様々ながん種におけるST6Gal-I量の増大は、転移や予後不良と関連がある。ST6Gal-Iを過剰発現しているHD3結腸がん細胞(HD3.par細胞)に比べて、shRNAの安定発現によりST6Gal-Iが欠乏している細胞(HD3.sh細胞)では、CH11(Fas活性化抗体)に応答するアポトーシス亢進(カスパーゼ3および7の活性化、核凝縮、細胞形態の変化により評価)を示したが、細胞死受容体4(DR4)およびDR5のリガンドであるTRAILに応答するアポトーシス亢進は示さなかった。同様に、Fasの本来のリガンドであるFasLで処理したHD3.sh細胞では、カスパーゼ3のさらに高い活性化が検出された。(通常はST6Gal-Iが検出されない)SW48結腸上皮細胞にST6Gal-Iを過剰発現させると、FasLで誘発されるアポトーシスが防止されたが、TRAILで誘発されるアポトーシスは防止されなかった。生化学的アッセイによって、ST6Gal-IによってFasにシアル酸が付加されることが示唆され、この修飾はCH11処理細胞におけるFasへのFADDの動員(すなわちDISC形成)を低下させ、Fasの細胞内移行を妨げた。つまり、結腸がん細胞はST6Gal-Iを多く含むことによって、Fas誘発性アポトーシスを免れているのかもしれない。
A. F. Swindall, S. L. Bellis, Sialylation of the Fas death receptor by ST6Gal-I provides protection against Fas-mediated apoptosis in colon carcinoma cells. J. Biol. Chem. 286, 22982-22990 (2011).[Abstract] [Full Text]
W. Wong, Evading Death. Sci. Signal. 4, ec184 (2011).