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細胞生物学
アイ・ラブ・ロイシン

Cell Biology
I Love Leucine

Editor's Choice

Sci. Signal., 1 May 2012
Vol. 5, Issue 222, p. ec121
[DOI: 10.1126/scisignal.2003167]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. M. Han, S. J. Jeong, M. C. Park, G. Kim, N. H. Kwon, H. K. Kim, S. H. Ha, S. H. Ryu, S. Kim, Leucyl-tRNA synthetase is an intracellular leucine sensor for the mTORC1-signaling pathway. Cell 149, 410-424 (2012). [PubMed]

G. Bonfils, M. Jaquenoud, S. Bontron, C. Ostrowicz, C. Ungermann, C. De Virgilio, Leucyl-tRNA synthetase controls TORC1 via the EGO complex. Mol. Cell 46, 105-110 (2012). [PubMed]

N. Segev, N. Hay, Hijacking leucyl-tRNA synthetase for amino acid-dependent regulation of TORC1. Mol. Cell 46, 4-6 (2012). [PubMed]

キナーゼの哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)および調節性成分Raptorを含むmTOR複合体1(mTORC1)は、アミノ酸などの栄養素の利用性を、細胞成長および増殖を媒介するシグナル伝達経路と共役させる。アミノ酸はmTORC1のリソソームへの転移を誘発し、そこでRagCとRaptorの結合を介してグアノシントリホスファターゼ(GTPases)のRagファミリーと相互作用する。今回、HanらとBonfilsらは、転移RNA(ttRNA)へのロイシンの「チャージング」、すなわちアミノアシル化を触媒し、アミノ酸をエディティング(編集)または校正するロイシンtRNAシンテターゼ(LRS)が、mTORC1のロイシンセンサーとして作用することを示している。しかし、両グループは異なる作用機構を提唱した(SegevおよびHayのコメント参照)。HanらはLRSがロイシン依存的にmTORおよびRaptorと免疫沈降することを見いだした。LRSに対するsiRNAは、アミノ酸、ロイシンおよびイソロイシン(程度は小さい)に応答するmTORC1の活性化を低下させ、アミノ酸刺激に応答するmTORおよびRaptorのリソソームへの転移を減少させた。トランスフェクションされた細胞において、LRSはRagDとは相互作用したが、RagAおよびRagB、RagCとは相互作用せず、ロイシン処理によって、内在性LRSと異所性に発現したRagDの結合が増大した。さらに、アミノ酸によって誘発されるRagDとRaptorの相互作用は、LRSの過剰発現によって亢進し、LRSのノックダウンによって低下した。LRSのPhe50およびTyr52は、ロイシン側鎖を収容する疎水性ポケットを形成し、これらの部位がアラニン置換されたLRS(Phe50→Ala/Tyr52→Ala)はRagDとは相互作用しなかった。LRSはGDP結合型を模倣したRagD変異体(Ser77→Leu、S77L)よりも、野生型RagDまたはGTP結合型(Gln121→Leu、Q121L)を模倣した変異体と相互作用し、RagD Q121Lとは共局在したが、RagD S77Lとは共局在しなかった。in vitroアッセイによって、LRSのC末端断片(RagDとは相互作用するが、ロイシンまたはATPとはしない)はRagDによるGTPの加水分解を亢進させることは示されたことから、LRSがRagDに対するGTPase活性化タンパク質(GAP)として作用することが示唆された。ロイシン刺激によって誘発されるRagDによるGTPの加水分解は、野生型LRSをトランスフェクションによって発現する細胞では亢進したが、F50A/Y25A変異体を発現する細胞では亢進しなかった。さらに、ロイシン刺激によるmTORC1の活性化は野生型LRS発現細胞では亢進したが、推定上のGAPモチーフが変異したLRSを発現した細胞では亢進しなかった。Bonfilsらは、質量分析と生化学的アッセイを用いて、LRSの酵母ホモログであるCdc60が、RagAとRagBの酵母ホモログであるGtr1とは相互作用するが、RagCとRagDの酵母ホモログであるGtr2とは相互作用しないことを独立して示した。この結果は、Hanらの結果とは異なる。Bonfilsらは、編集活性部位でアミノアシル化されていないtRNALeuを捕捉する化合物であるDHBBで処理すると、野生型細胞においてTORC1活性が抑制されたことから、Cdc60がTORC1活性を亢進するためには、アミノアシル化活性は必要ではなく(Hanらも同様の知見を報告)、むしろアミノ酸編集活性が必要であることを明らかにした。DHBBはGTP結合型Gtr1量も減少させた。ノルバリンはLRSの編集活性を阻害し、細胞をノルバリン処理するとTORC1が阻害された。LRSの編集活性を媒介するCP1ドメインは、Gtr1とは相互作用したが、RagCおよびRagDの酵母ホモログであるGtr2とは相互作用しなかった。Bonfilsらは、ロイシンの枯渇がLRSのtRNALeuミスチャージを引き起こし、CP1ドメインのコンホメーション変化を誘発し、GAPのGtr1へのアクセスとGTPの加水分解を可能にすることによって、TORC1活性を低下させると提唱している。HanらとBonfilsらの提唱するLRSの結合パートナーが異なる理由、および機構が異なる理由は不明である。

W. Wong, I Love Leucine. Sci. Signal. 5, ec121 (2012).

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2012年5月1日号

Editor's Choice

細胞生物学
アイ・ラブ・ロイシン

Research Article

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