• ホーム
  • 乳がんではAKT1によりリン酸化されたSIRT6のMDM2を介した分解が、腫瘍形成およびトラスツズマブ耐性を促進する

乳がんではAKT1によりリン酸化されたSIRT6のMDM2を介した分解が、腫瘍形成およびトラスツズマブ耐性を促進する

MDM2-mediated degradation of SIRT6 phosphorylated by AKT1 promotes tumorigenesis and trastuzumab resistance in breast cancer

Research Article

Sci. Signal., 29 July 2014
Vol. 7, Issue 336, p. ra71
DOI: 10.1126/scisignal.2005076

Umadevi Thirumurthi1,2, Jia Shen1,2, Weiya Xia1, Adam M. LaBaff1,2,*, Yongkun Wei1, Chia-Wei Li1, Wei-Chao Chang3, Chung-Hsuan Chen4,5,6, Hui-Kuan Lin1,2, Dihua Yu1,2, and Mien-Chie Hung1,2,3,7,

1 Department of Molecular and Cellular Oncology, The University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX 77030, USA.
2 The University of Texas Graduate School of Biomedical Sciences at Houston, Houston, TX 77030, USA.
3 Center for Molecular Medicine and Graduate Institute of Cancer Biology, China Medical University, Taichung 404, Taiwan.
4 Genomics Research Center, Academia Sinica, Nankang, Taipei 106, Taiwan.
5 Institute of Atomic and Molecular Sciences, Academia Sinica, Taipei 106, Taiwan.
6 Department of Chemistry, National Taiwan University, Taipei 106, Taiwan.
7 Department of Biotechnology, Asia University, Taichung 413, Taiwan.

Corresponding author. E-mail: mhung@mdanderson.org

* Present address: Department of Cancer Biology, Wake Forest School of Medicine, Winston-Salem, NC 27157, USA.

サーチュイン6(SIRT6)は寿命と関連し、腫瘍抑制因子とも関連している。SIRT6の調節分子を同定することで、がん患者におけるその治療的活性化が可能になるかもしれない。種々の乳がん細胞株において、われわれはSIRT6がSer338部位でキナーゼAKT1によりリン酸化され、これがMDM2とSIRT6の相互作用とそれによるユビキチン化を誘導し、SIRT6をプロテアーゼ依存性の分解の標的にすることを見いだした。乳がん患者の生存はSIRT6存在量と正の相関を示し、Ser338部位でのSIRT6のリン酸化と負の相関を示した。乳がん生検検体パネルにおいて、SIRT6の存在量はリン酸化AKTの存在量と負の相関を示していた。AKTの阻害もしくはSer338部位の突然変異によるSIRT6リン酸化の阻止は、MDM2を介するSIRT6の分解を阻止し、培養系において乳がん細胞の増殖を抑制し、マウスにおける乳がん異種移植片の増殖を阻害した。MDM2の過剰発現は細胞中のSIRT6の存在量を減少させたが、一方でE3リガーゼ欠損MDM2の過剰発現または内因性MDM2のノックダウンは、SIRT6の存在量を増加させた。トラスツズマブ(ハーセプチンとして知られる)は一部の乳がんに共通な特異的受容体を標的とする薬物で、SIRT6をノックダウンしたとき、トラスツズマブに曝露された乳がん細胞の生存が延長した。耐性乳がん細胞株における非リン酸化型SIRT6突然変異の過剰発現は、トラスツズマブ感受性を亢進した。このように、SIRT6の安定化は、乳がん患者におけるトラスツズマブ耐性克服のための臨床的戦略となる可能性がある。

U. Thirumurthi, J. Shen, W. Xia, A. M. LaBaff, Y. Wei, C. Li, W. Chang, C. Chen, H. Lin, D. Yu, and M. Hung, MDM2-mediated degradation of SIRT6 phosphorylated by AKT1 promotes tumorigenesis and trastuzumab resistance in breast cancer. Sci. Signal. 7, ra71 (2014).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2014年7月29日号

Editors' Choice

神経科学
スピードのシナプス伝達

Research Article

TLR4の細胞膜へのデリバリーの開始と調節にはCOP IIアダプタータンパク質TMED7が必要である

乳がんではAKT1によりリン酸化されたSIRT6のMDM2を介した分解が、腫瘍形成およびトラスツズマブ耐性を促進する

Rab13はリンパ球輸送のためにインテグリンLFA-1を細胞表面に届けるようにキナーゼMst1の下流で作用する

最新のResearch Article記事

2025年09月16日号

インターロイキン15と18はmTORC1の非典型的活性化を通じてナチュラルキラー細胞の抗腫瘍機能を相乗的に刺激する

2025年09月16日号

野生型RASシグナル伝達はRAS変異型がんのきわめて重要な治療標的である

2025年09月09日号

フソバクテリウム・ヌクレアタムは酪酸駆動型エピジェネティック機構を通じてアンフェタミン誘導行動応答を増強する

2025年09月02日号

一次感覚ニューロンのGαqシグナル伝達がオピオイドの鎮痛作用をNMDA受容体誘導性の耐性および痛覚過敏に変化させる

2025年09月02日号

MAPKおよびmTORC1シグナル伝達は収束してサイクリンD1タンパク質の産生を駆動することによってメラノーマのパーシスター(残存)細胞における細胞周期の再開を可能にしている