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HER2-mTORシグナル伝達で誘導される乳がん細胞の生存にはER関連分解が必要

HER2-mTOR signaling–driven breast cancer cells require ER-associated degradation to survive

Research Article

Sci. Signal., 26 May 2015
Vol. 8, Issue 378, p. ra52
DOI: 10.1126/scisignal.aaa6922

Navneet Singh1, Rashika Joshi1, and Kakajan Komurov1,2,3,*

1 Division of Experimental Hematology and Cancer Biology, Cincinnati Children's Hospital Medical Center, Cincinnati, OH 45229, USA.
2 Division of Human Genetics, Cincinnati Children's Hospital Medical Center, Cincinnati, OH 45229, USA.
3 Division of Biomedical Informatics, Cincinnati Children's Hospital Medical Center, Cincinnati, OH 45229, USA.

* Corresponding author. E-mail: kakajan.komurov@cchmc.org

要約 非がん遺伝子の脆弱性を標的とする治療は、がん遺伝子標的療法に抵抗性のある腫瘍に対する新たな治療アプローチとなる可能性がある。本研究では、計算論的な経路に基づくアプローチを用いて、臨床での乳がんゲノムデータセットについて、ヒト上皮成長因子2(HER2)をコードするERBB2のゲノム増幅がみられる乳がんにおける非がん遺伝子脆弱性の候補を探索した。HER2陽性(HER2+)乳がんでは、小胞体(ER)関連分解(ERAD)経路のタンパク質をコードする遺伝子の発現亢進が認められた。ERADの遺伝学的除去または薬理学的阻害によって、回復不能なERストレスが生じ、HER2+乳がん細胞が選択的に死滅した。ERAD阻害による細胞死は、一部、ERに対してタンパク質毒性の負担の増加を強いるHER2-mTORシグナル伝達の亢進に依存していた。ERストレスによる細胞死にはIRE1α-JNK経路が必要であり、この経路は、HER2+乳がんではJNKを不活化するホスファターゼにより選択的に抑制されていた。したがって、ERADおよびJNKホスファターゼを阻害する細胞毒性は、HER2+乳がんでは相乗作用があったが、HER2陰性乳がんではそのような作用はなかった。以上、本研究から、ストレス適応経路を標的とすることによるがん遺伝子誘発ストレスの再活性化が治療抵抗性乳がんに対する有益なアプローチになり得ると考えられる。

N. Singh, R. Joshi, and K. Komurov, HER2-mTOR signaling-driven breast cancer cells require ER-associated degradation to survive. Sci. Signal. 8, ra52 (2015).

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