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代謝
十二指腸を標的にして糖尿病をコントロールする

Metabolism
Targeting the duodenum to control diabetes

Editor's Choice

Sci. Signal., 26 May 2015
Vol. 8, Issue 378, p. ec134
DOI: 10.1126/scisignal.aac6238

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

C. D. Côté, B. A. Rasmussen, F. A. Duca, M. Zadeh-Tahmasebi, J. A. Baur, M. Daljeet, D. M. Breen, B. M Filippi, T. K. T. Lam, Resveratrol activates duodenal Sirt1 to reverse insulin resistance in rats through a neuronal network. Nat. Med. 21, 498–505 (2015). [PubMed]

F. A. Duca, C. D. Côté, B. A. Rasmussen, M. Zadeh-Tahmasebi, G. A. Rutter, B. M. Filippi, T. K. T. Lam, Metformin activates a duodenal Ampk–dependent pathway to lower hepatic glucose production in rats. Nat. Med. 21, 506–511 (2015). [PubMed]

B. K. Smith, G. R. Steinberg, Duodenal energy sensing regulates hepatic glucose output. Nat. Med. 21, 428–429 (2015). [PubMed]

末梢組織におけるグルコースの取り込みおよび代謝の障害と、肝臓によるグルコース産生(HPG)の増加が組み合わさり、2型糖尿病の高血糖を引き起こす。通常、食物が消化管−脳−肝臓軸を引き起こし、HGPを抑制する。すなわち、求心性迷走神経を活性化するグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)などのシグナルを腸管が放出し、これが脳内のグルタミン酸作動性ニューロンの活性を刺激して、次は遠心性迷走神経を介して肝臓にシグナル伝達してHGPを抑制している(Smith and Steinberg参照)。2本の論文が、数種の2型糖尿病げっ歯類モデルにおいて、メトホルミンとレスベラトロールが十二指腸内で働き、この消化管−脳−肝臓軸を刺激してHGPを低下させ、それによって糖代謝を改善することを報告している。Côtéらは、十二指腸内にレスベラトロールの標的であるNAD+依存性脱アセチル化酵素Sirt1が存在していることを確認した。高脂肪食(HFD)が給餌されたラットでは通常食が給餌されたラットに比べ、レスベラトロールの十二指腸内注入がHPGを大きく低下させた。この反応は、十二指腸のSirt1のノックダウンにより、もしくはSirt1阻害剤またはコンパウンドC(AMP活性化プロテインキナーゼ:AMPK阻害剤)との同時注入により消失した。HFDラットではSirt1転写産物およびタンパク質の存在量が減少していたが、これはレスベラトロールの十二指腸内注入により正常化した。同じ十二指腸内注入の実験パラダイムを用い、Ducaらは、HFDラットにおいてAMPK活性を刺激するメトホルミンはHPGも抑制すること、さらに、アデノウイルスを介して十二指腸内にドミナントネガティブなAMPK導入する、またはコンパウンドCを同時注入することで、この作用は遮断されることを明らかにした。GLP-1受容体[求心性迷走神経においてプロテインキナーゼA(PKA)のシグナル伝達を刺激する]の阻害剤を同時注入する、または肝臓の遠心性迷走神経を切除することにより、メトホルミンの十二指腸内注入により誘発されるHGPの抑制が遮断された。メトホルミンまたはレスベラトロールの十二指腸内注入によるHPGの抑制は、また、PKA阻害剤の同時注入、もしくはグルタミン酸受容体アンタゴニストの頭蓋内注入によっても遮断された。レスベラトロールとメトホルミンの吸収前の作用は、異なる2種類の2型糖尿病ラットモデルでも認められたことから、慢性的病態において糖代謝を改善する際、これら2つの化合物の作用にはこの消化管−脳−肝臓軸が重要であることが確認された。

N. R. Gough, Targeting the duodenum to control diabetes. Sci. Signal. 8, ec134 (2015).

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