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DNAのメチル化がニューロンのグルタミン酸作動性シナプスのスケーリングを制御する

DNA methylation regulates neuronal glutamatergic synaptic scaling

Research Article

Sci. Signal. 23 Jun 2015:
Vol. 8, Issue 382, pp. ra61
DOI: 10.1126/scisignal.aab0715

Jarrod P. Meadows, Mikael C. Guzman-Karlsson, Scott Phillips, Cassie Holleman, Jessica L. Posey, Jeremy J. Day, John J. Hablitz*, and J. David Sweatt*

Evelyn F. McKnight Brain Institute, Department of Neurobiology, University of Alabama at Birmingham, Birmingham, AL 35294, USA.

* Corresponding author. E-mail: jhablitz@uab.edu (J.J.H.); dsweatt@uab.edu (J.D.S.)

要約 グルタミン酸作動性入力を受けるニューロン上のすべてのシナプス応答が増強することは、「細胞全体に及ぶシナプスのアップスケーリング(cell-wide synaptic upscaling)」と呼ばれている。われわれは、この種のシナプス可塑性が、エピジェネティックな機構(DNAの共有結合による化学修飾など)にも依存すると思われるプロセスである大脳皮質回路内の長期記憶の保存に、重要であるかもしれないという仮説をたてた。われわれは、培養した皮質ニューロンにおいて、DNAシトシンの脱メチル化が、グルタミン酸作動性シナプス強度の相乗的なシナプスのアップスケーリングを媒介していることを見いだした。テトロドトキシン(TTX)によるニューロン活性の阻害は、グルタミン酸受容体と輸送タンパク質をコードする遺伝子の、シトシンのメチル化を抑制し、その発現量を増加させた。さらに微小興奮性シナプス後電流(mEPSC)の振幅の増加が生じたが、その頻度は増加しなかった。このことは、自発活動の増強ではなくシナプスのアップスケーリングが生じたことを示している。低分子阻害物質RG108を用いることによる、もしくはDnmt1およびDnmt3aのノックダウンによるDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)活性の阻害は、TTX曝露時と同様の大きさまでシナプスのアップスケーリングを誘発した。さらに、DNMT阻害誘発性のアップスケーリングは転写を必要とし、RNAポリメラーゼ阻害物質であるアクチノマイシンDは、DNMT阻害誘発性のアップスケーリングを遮断した。シトシン脱メチル化酵素TET1のノックダウンも、RG108のアップスケーリング作用を遮断した。DNMTの阻害はmEPSC振幅の相乗的な増加を誘発し、このことは、グルタミン酸受容体の存在量の変化はニューロン全体で協調的に生じ、個々の活性シナプスに限られないことを示唆している。われわれのデータは、DNAメチル化の状態が、グルタミン酸作動性シナプスの恒常性の転写依存性調節をコントロールしていることを示唆している。さらに、DNAの共有結合修飾は、記憶の形成と安定化の根底にあるシナプス可塑性というイベントに寄与している可能性がある。

Citation: J. P. Meadows, M. C. Guzman-Karlsson, S. Phillips, C. Holleman, J. L. Posey, J. J. Day, J. J. Hablitz, J. D. Sweatt, DNA methylation regulates neuronal glutamatergic synaptic scaling. Sci. Signal. 8, ra61 (2015).

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