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ABLキナーゼはTAZおよびSTAT5シグナル伝達を介して腫瘍と骨の相互作用を調節することによって乳がんの骨溶解性転移を促進する
ABL kinases promote breast cancer osteolytic metastasis by modulating tumor-bone interactions through TAZ and STAT5 signaling
Sci. Signal. 02 Feb 2016:
Vol. 9, Issue 413, pp. ra12
DOI: 10.1126/scisignal.aad3210
Jun Wang1, Clay Rouse2, Jeff S. Jasper1, and Ann Marie Pendergast1,*
1 Department of Pharmacology and Cancer Biology, Duke University School of Medicine, Durham, NC 27710, USA.
2 Division of Laboratory Animal Resources, Duke University School of Medicine, Durham, NC 27710, USA.
* Corresponding author. E-mail: ann.pendergast@duke.edu
要約 骨転移は、進行性乳がんの実に70%で発生する。乳がん患者では、骨転移はもっぱら骨溶解性である。骨溶解性骨転移の過程には骨を破壊する破骨細胞の活性化が必要であり、骨微小環境における腫瘍細胞と間質細胞の相互作用がこの過程を促進する。本稿では、ABLキナーゼが腫瘍細胞と骨微小環境のクロストークを調節することによって乳がん細胞の骨への転移を促進したことを報告する。ABLキナーゼは、TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)によって誘導されるアポトーシスから腫瘍細胞を保護し、転写因子STAT5を活性化し、破骨細胞活性化因子であるインターロイキン6(IL-6)とマトリックスメタロプロテアーゼ1(MMP1)をコードする遺伝子のSTAT5依存的発現を介して骨溶解を促進した。さらに、乳がん細胞においてABLキナーゼは、Hippoシグナル経路調節因子TAZの存在量と、骨転移を促進させるTAZ依存性標的遺伝子の発現量を増加させた。マウスでは、ABLキナーゼのノックダウンまたはABL特異的アロステリック阻害薬による処理によって、乳がん細胞の骨溶解性転移は低下した。これらの知見は、腫瘍と骨の相互作用の調節におけるABLの役割を明らかにし、乳がんの骨転移を制限する目的でABL特異的阻害薬を使用する理論的根拠を与えている。
Citation: J. Wang, C. Rouse, J. S. Jasper, A. M. Pendergast, ABL kinases promote breast cancer osteolytic metastasis by modulating tumor-bone interactions through TAZ and STAT5 signaling. Sci. Signal. 9, ra12 (2016).