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毒性のTRPA1活性がミエリンを分解する

Toxic TRPA1 activity degrades myelin

Editor's Choice

Sci. Signal. 02 Feb 2016:
Vol. 9, Issue 413, pp. ec20
DOI: 10.1126/scisignal.aaf3611

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

N. B. Hamilton, K. Kolodziejczyk, E. Kougioumtzidou, D. Attwell, Proton-gated Ca2+-permeable TRP channels damage myelin in conditions mimicking ischaemia. Nature 529, 523–527 (2016). [PubMed]

A. S. Saab, K.-A. Nave, A mechanism for myelin injury. Nature 529, 474–475 (2016). [PubMed]

虚血(血流の消失により、酸素と栄養素が組織から欠乏する状態。脳卒中などで生じる)は、オリゴデンドロサイトが生成するミエリン鞘をはじめとするニューロンやグリアに損傷を与える。NMDA型グルタミン酸受容体を介した細胞傷害性のCa2+流入はニューロンの損傷に重要な役割を果たしているが、Hamiltonらは、げっ歯類におけるオリゴデンドロサイトの損傷には、二価カチオン透過性チャネルであるTRPA1が関与しているというエビデンスを示した。電気生理学的解析、イオン選択性電極を用いた解析、およびイオン感応性色素を用いたイオン画像解析から、ラットの小脳スライス標本のオリゴデンドロサイトにおいて、虚血誘導性の細胞内H+、Ca2+およびMg2+の増加、ならびにK+のコンダクタンス低下が示された。さらに、細胞外K+は増加していた。オリゴデンドロサイトの細胞外Ca2+またはK+の除去により、それぞれ細胞内Ca2+およびH+の虚血誘発性の増加が消失または減少した。このことは、細胞内Ca2+の増加は細胞内貯蔵からの放出によるものではなく、細胞外Ca2+の流入によること、さらに、K+の変化はおそらくサイトゾルを酸性化することでこのCa2+流入を促進したであろうことを示唆していた。TRPA1およびTRPA3は、低pHにより活性化される一過性受容体電位(TRP)ファミリーのチャネルである。TRPA1およびTRPA3の薬理学的アゴニストおよびアンタゴニストを用いた実験から、TRPA1は、オリゴデンドロサイトのH+誘発性細胞内Ca2+の増加に関与していることが示唆された。この結論は、Trpa1ノックアウトマウスのスライス標本を用いた実験、ならびに、成熟マウスのオリゴデンドロサイトにおいてTRPA1をコードする転写産物を検出したが、TRPA3をコードする転写産物は検出しなかったことからも裏付けられた。ラット視神経ミエリン損傷モデルでは、TRPA1の薬理学的な遮断は虚血誘発性ミエリン損傷を抑制したが、軸索損傷は阻止せず、このことはグリア損傷とニューロン損傷が異なる分子機構を介して生じていることを示唆していた。pHを介したTRPチャネルの活性化が、脳および神経系の他の領域にも、またヒトにおいても関与しているかは未だ明らかではない。しかしこれらの結果は、TRPA1チャネルを標的とすることが、脳卒中患者に対して治療上有用かもしれないことを示唆している(SaabとNaveの論文を参照)。

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2016年2月2日号

Editor's Choice

毒性のTRPA1活性がミエリンを分解する

Research Article

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