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κオピオイド受容体のバイアスアゴニストは鎮静または不快を引き起こすことなく疼痛とそう痒を抑制する

Biased agonists of the kappa opioid receptor suppress pain and itch without causing sedation or dysphoria

Research Article

Sci. Signal. 29 Nov 2016:
Vol. 9, Issue 456, pp. ra117
DOI: 10.1126/scisignal.aai8441

Tarsis F. Brust1, Jenny Morgenweck1, Susy A. Kim2, Jamie H. Rose3, Jason L. Locke3, Cullen L. Schmid1, Lei Zhou1, Edward L. Stahl1, Michael D. Cameron1, Sarah M. Scarry4, Jeffrey Aubé4, Sara R. Jones3,Thomas J. Martin2, and Laura M. Bohn1,*

1 Departments of Molecular Therapeutics and Neuroscience, The Scripps Research Institute, Jupiter, FL 33458, USA.
2 Department of Anesthesiology, Wake Forest School of Medicine, Winston-Salem, NC 27157, USA.
3 Department of Physiology and Pharmacology, Wake Forest School of Medicine, Winston-Salem, NC 27157, USA.
4 Division of Chemical Biology and Medicinal Chemistry, UNC Eshelman School of Pharmacy, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC 27599, USA.

* Corresponding author. Email: lbohn@scripps.edu

要約

κオピオイド受容体(KOR)を標的とするアゴニストは、難治性そう痒の治療と疼痛の緩和に有効であることから、有望な治療薬候補とされている。典型的なオピオイド系の麻薬とは異なり、KORアゴニストは高揚をもたらさず、呼吸抑制や過量摂取を引き起こさない。しかし、不快と鎮静を引き起こし、これらの副作用のために治療薬としての臨床開発が妨げられている。KORシグナル伝達は、特定の経路を他の経路よりも優先的に活性化させるように微調整することができ、受容体がβアレスチン2などの他のエフェクターではなくGタンパク質を介してシグナルを伝達するようにアゴニストがシグナル伝達にバイアスをかけることが可能である。われわれは、疼痛、そう痒症、鎮静、ドパミン調節、不快の前臨床モデルにおいて、新たに開発された、Gタンパク質シグナル伝達にバイアスされたKORアゴニストを評価した。トリアゾール1.1は、従来のKORアゴニストの抗侵害受容作用と鎮痒作用を保持しているが、マウスにおいて鎮静またはドパミン放出の低下を引き起こさず、ラットにおいて脳内自己刺激により評価される不快を引き起こすこともないことが見出された。これらのデータから、バイアスアゴニストは、受容体の下流の生理的応答を分離するために用いることができることが示された。さらに、これらの知見から、バイアスされたKORアゴニストは、不快や鎮静といった副作用を伴わず、乱用の可能性が低い、疼痛および難治性そう痒の治療法となる可能性があることが示唆される。

Citation: : T. F. Brust, J. Morgenweck, S. A. Kim, J. H. Rose, J. L. Locke, C. L. Schmid, L. Zhou, E. L. Stahl, M. D. Cameron, S. M. Scarry, J. Aubé, S. R. Jones, T. J. Martin, L. M. Bohn, Biased agonists of the kappa opioid receptor suppress pain and itch without causing sedation or dysphoria. Sci. Signal. 9, ra117 (2016).

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