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肥満細胞および好塩基球におけるFc受容体による活性化および増殖シグナルのトランス阻害

Trans-inhibition of activation and proliferation signals by Fc receptors in mast cells and basophils

Research Article

Sci. Signal. 20 Dec 2016:
Vol. 9, Issue 459, pp. ra126
DOI: 10.1126/scisignal.aag1401

Odile Malbec1,2,*, Lydie Cassard1,2,†, Marcello Albanesi1,2,‡, Friederike Jönsson1,2,§, David Mancardi1,2, Gaëtan Chicanne3,4,5, Bernard Payrastre3,4,5, Patrice Dubreuil6,7,8,9, Eric Vivier10,11, and Marc Daëron1,2,10,¶

1 Institut Pasteur, Département d'Immunologie, Unité d'Allergologie Moléculaire et Cellulaire, Paris, France.
2 Inserm, Unité 760, Paris, France.
3 Inserm, Unité 1048, Toulouse, France.
4 Université Toulouse 3, Toulouse, France.
5 Institut des Maladies Métaboliques et Cardiovasculaires, Toulouse, France.
6 Inserm, Unité 1068, Centre de Recherche en Cancérologie de Marseille, Marseille, France.
7 Institut Paoli-Calmettes, Marseille, France.
8 Aix Marseille Université, Marseille, France.
9 CNRS, UMR 7258, Marseille, France.
10 Centre d'Immunologie de Marseille-Luminy, Aix Marseille Université, Inserm, CNRS, Marseille, France.
11 Hôpital de la Conception, Marseille, France.

¶ Corresponding author. Email: marc.daeron@pasteur.fr

* Present address: Inserm U.932, Institut Curie, 75005 Paris, France.

† Present address: Laboratoire d'Immunomonitoring en Oncologie, Institut Gustave Roussy, 94800 Villejuif, France.

‡ Present address: Allergology and Clinical Immunology, Università di Bari Aldo Moro, 70124 Bari, Italy.

§ Present address: Inserm U.1222, Institut Pasteur, 75015 Paris, France.

要約

アレルギーおよび自己免疫性炎症は、それぞれアレルゲンまたは自己抗原に対する抗体による肥満細胞および好塩基球の活性化に関連する。両方の細胞型は、抗体のFc部分に対するいくつかの受容体を発現し、抗原-抗体複合体形成にそれらが関与することによりその応答が制御される。高親和性免疫グロブリンE(IgE)受容体(FcεRI)および低親和性IgG受容体(マウスでFcγRIIIA、ヒトでFcγRIIA)は、細胞膜上に凝集すると、臨床症状の原因となる炎症促進性仲介物質、ケモカインおよびサイトカインのこれらの細胞からの放出と分泌を導く。同じ細胞上で活性化受容体と共凝集すると、他の低親和性IgG受容体(両種でFcγRIIB)が肥満細胞および好塩基球の活性化を阻害する。われわれは、FcγRIIBが、共関与する受容体を活性化することにより誘発されるシグナルを阻害する(シス阻害)だけでなく、独立して関与する受容体により誘発されるシグナルも阻害すること(トランス阻害)を見出した。トランス阻害は、マウス肥満細胞、マウス好塩基球およびヒト好塩基球のFcεRI依存的活性化や、増殖因子受容体(Kit)依存的正常マウス肥満細胞の増殖、さらに、がん遺伝子(v-Abl)で形質転換された肥満細胞腫細胞の構成的in vitro増殖およびin vivo増殖に作用した。トランス阻害は、阻害性(FcγRIIB)あるいは活性性(FcεRI)に関わらず、脂質ホスファターゼSHIP1を動員する受容体により誘導された。SHIP1は、PI(3,4,5)P3を加水分解することにより、シグナル伝達にホスホイノシチド3-キナーゼを用いる受容体により誘発される生物学的応答に影響する広範な不応答を引き起こした。これらのデータは、トランス阻害が多数の生理学的および病理学的プロセスを制御し、特にアレルギーおよび自己免疫において、しかしそれら疾患にとどまらず、炎症の治療ツールとして用い得ることを示唆する。

Citation: O. Malbec, L. Cassard, M. Albanesi, F. Jönsson, D. Mancardi, G. Chicanne, B. Payrastre, P. Dubreuil, E. Vivier, M. Daëron, Trans-inhibition of activation and proliferation signals by Fc receptors in mast cells and basophils. Sci. Signal. 9, ra126 (2016).

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