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PSMAはMAPKからPI3K-AKT経路へ細胞生存シグナル伝達を切り替えて前立腺がんの進行を促進する

PSMA redirects cell survival signaling from the MAPK to the PI3K-AKT pathways to promote the progression of prostate cancer

Research Article

Sci. Signal. 14 Mar 2017:
Vol. 10, Issue 470,
DOI: 10.1126/scisignal.aag3326

Leslie Ann Caromile1, Kristina Dortche1, M. Mamunur Rahman1, Christina L. Grant1, Christopher Stoddard2, Fernando A. Ferrer3, and Linda H. Shapiro1,*

1 Center for Vascular Biology, University of Connecticut Health Center, Farmington, CT 06030, USA.
2 Department of Genetics and Developmental Biology, University of Connecticut Health Center, Farmington, CT 06030, USA.
3 Department of Urology, New York Medical College, Valhalla, NY 10595, USA.

* Corresponding author. Email: lshapiro@uchc.edu

要約

前立腺上皮上の前立腺特異的膜抗原(PSMA)の存在量の増加は、進行した転移性前立腺がん(PCa)の特徴であり、予後と負に相関する。しかしながら、PSMAが機能的にPCaの進行に寄与するという直接的な証拠は依然として不明なままである。われわれは、PSMA欠損マウスをトランスジェニックPCa(TRAMP)モデルと交配させることにより、PSMA陽性またはPSMA陰性PCaをもつマウスを作製し、PSMAの存在下または非存在下でのPCa発症率および進行の直接評価を可能にした。PSMA陽性腫瘍と比べると、PSMA陰性腫瘍は、知られていたPSMAの血管新生機能と一致して、より小さく、低悪性度で、より多くのアポトーシス、および、より少ない血管を有した。PSMA陽性腫瘍と比較して、PSMAを欠く腫瘍は、1型インスリン様成長因子受容体(IGF-1R)の存在量が半分以下であり、PI3K-AKTシグナル伝達を介した生存経路の活性が低く、MAPK-ERK1/2シグナル伝達を介した増殖経路の活性が高かった。生化学的には、PSMAは足場タンパク質RACK1と相互作用し、MAPK経路へのβ1インテグリンとIGF-1R複合体間のシグナル伝達を阻害し、代わりにAKT経路の活性化を可能にした。PCa細胞株におけるPSMA存在量の操作は、このシグナル伝達経路スイッチを再現した。公開データベース分析は、IGF-1R存在量、細胞増殖、および抗アポトーシスマーカーの転写産物の発現が、患者におけるPSMA存在量と正の相関があることを示し、このスイッチがヒトPCaに関連し得ることを示唆した。これらの知見は、前立腺腫瘍におけるPSMAの増加が、正常なシグナル伝達経路を、PCa進行を駆動するよう変化させることにより進行に寄与し、IGF-1R/β1インテグリン軸を介したシグナル伝達の増強が他の腫瘍でも起こり得ることを示唆する。

Citation: L. A. Caromile, K. Dortche, M. M. Rahman, C. L. Grant, C. Stoddard, F. A. Ferrer, L. H. Shapiro, PSMA redirects cell survival signaling from the MAPK to the PI3K-AKT pathways to promote the progression of prostate cancer. Sci. Signal. 10, eaag3326 (2017).

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