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RNA編集酵素ADARはFAKを安定化することによって肺腺がんの遊走と浸潤を促進する

The RNA-editing enzyme ADAR promotes lung adenocarcinoma migration and invasion by stabilizing FAK

Research Article

Sci. Signal. 19 Sep 2017:
Vol. 10, Issue 497, eaah3941
DOI: 10.1126/scisignal.aah3941

Elianna M. Amin1, Yuan Liu1, Su Deng1, Kay See Tan2, Neel Chudgar1, Marty W. Mayo3, Francisco Sanchez-Vega2, Prasad S. Adusumilli1, Nikolaus Schultz2, and David R. Jones1,*

1 Department of Surgery, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY 10065, USA.
2 Department of Epidemiology and Biostatistics, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NY 10065, USA.
3 Department of Biochemistry and Molecular Genetics, University of Virginia, Charlottesville, VA 22908, USA.

* Corresponding author. Email: jonesd2@mskcc.org

要約
大規模なゲノムワイド解析により、がんにおいてはRNA結合タンパク質が変化することが報告されているが、これらのタンパク質が腫瘍の進行を制御する仕組みは不明である。われわれは、RNA編集タンパク質ADAR(二本鎖RNA特異的アデノシンデアミナーゼ)が、接着斑キナーゼ(FAK)をコードする転写物を安定化する能力によって、肺腺がん(LUAD)進行の促進因子として作用することを見出した。I期LUAD患者802例から得た検体において、ADARのmRNAレベルおよびタンパク質レベルでの存在量増加に、腫瘍再発との相関が認められた。LUAD細胞においてADARをノックダウンすると、培養下での間葉系の性質、遊走、浸潤が抑制された。LUAD細胞の遺伝子発現パターンの解析により、細胞遊走経路に関与する遺伝子サブセットの、ADARに関連したエンリッチメントが同定された。これらの遺伝子の中で、ADAR存在下で発現が増加したFAK はもっとも注目すべき遺伝子である。分子解析により、ADARは、FAK転写物に結合し、特異的なイントロン部位を編集してFAK mRNAの安定化を促進することによって、FAKタンパク質の存在量を転写後に増加させることが明らかになった。FAKを薬理学的に阻害すると、LUAD細胞のADAR誘導性の浸潤活性が阻害されたことから、この方法をADAR存在量が高いLUADの治療に応用できる可能性が示唆された。

Citation: E. M. Amin, Y. Liu, S. Deng, K. S. Tan, N. Chudgar, M. W. Mayo, F. Sanchez-Vega, P. S. Adusumilli, N. Schultz, D. R. Jones, The RNA-editing enzyme ADAR promotes lung adenocarcinoma migration and invasion by stabilizing FAK. Sci. Signal. 10, eaah3941 (2017).

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2017年9月19日号

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ハイライト:がんにおけるRNA結合タンパク質

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