• ホーム
  • 発がん性PI3Kはシスチン-グルタミン酸対向輸送体xCTを介して乳がん細胞のメチオニン依存性を促進する

発がん性PI3Kはシスチン-グルタミン酸対向輸送体xCTを介して乳がん細胞のメチオニン依存性を促進する

Oncogenic PI3K promotes methionine dependency in breast cancer cells through the cystine-glutamate antiporter xCT

Research Article

Sci. Signal. 19 Dec 2017:
Vol. 10, Issue 510, eaao6604
DOI: 10.1126/scisignal.aao6604

Evan C. Lien1,*, Laura Ghisolfi1, Renee C. Geck1, John M. Asara2,3, and Alex Toker1,2,3,4,†

1 Department of Pathology, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.
2 Department of Medicine, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston 02215 MA, USA.
3 Cancer Center, Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical School, Boston, MA 02215, USA.
4 Ludwig Center at Harvard, Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.

† Corresponding author. Email: atoker@bidmc.harvard.edu

* Present address: Koch Institute for Integrative Cancer Research, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA 02139, USA.

要約
前駆体ホモシステインはメチオニンを産生するメチオニンサイクルを介して、もしくはシステインを合成するトランススルフレーション経路を介して代謝される。あるいは、システインはその酸化型であるシスチンの取込みを介して得られる。多くのがん細胞はメチオニン依存性を示し、メチオニンをホモシステインに置換した増殖培地中では、増殖が阻害される。本研究では、発がん性PIK3CA および、xCTとも呼ばれシスチントランスポーターをコードする遺伝子であるSLC7A11の発現低下と、乳がん細胞におけるメチオニン依存性の増加との間に相関があることを明らかにした。発がん性のPIK3CAは、哺乳類上皮細胞にメチオニン依存性を付与するのに十分であり、それはxCTの転写および翻訳後阻害を介したシスチン取込みの減少が原因の一つであった。xCT活性の操作は、メチオニン欠乏ホモシステイン含有培地中での乳がん細胞の増殖に影響を及ぼすことから、xCTはメチオニン依存性に機能的に寄与すると考えられる。われわれは、xCTを介したシスチン取込み低下と同時に、PIK3CA変異細胞がトランススルフレーション経路を介してホモシステインを利用し、システインを合成することを提唱する。その結果、メチオニン産生に利用できるホモシステインが減少し、それがメチオニン依存性の原因となる。これらの結果から、発がん性PIK3CAは、xCTを阻害して乳がん細胞中のメチオニン依存性表現型に寄与することが一因となって、メチオニンおよびシステイン利用に影響を及ぼすことが示された。

Citation: E. C. Lien, L. Ghisolfi, R. C. Geck, J. M. Asara, A. Toker, Oncogenic PI3K promotes methionine dependency in breast cancer cells through the cystine-glutamate antiporter xCT. Sci. Signal. 10, eaao6604 (2017).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2017年12月19日号

Editor's Choice

ハイライト:IL-2受容体のシグナル伝達

Research Article

制御性T細胞サブセットの恒常性および発生の変化が、NODマウスにおける糖尿病のIL-2R依存性リスクを説明する

IL-2Rβの存在量はCD4+およびCD8+T細胞におけるIL-2シグナル伝達動態を差次的に調整する

mGluR5拮抗作用はオートファジーを亢進させ、ハンチントン病のzQ175マウスモデルにおいて疾患の進行を妨げる

発がん性PI3Kはシスチン-グルタミン酸対向輸送体xCTを介して乳がん細胞のメチオニン依存性を促進する

最新のResearch Article記事

2024年2月27日号

ALOX5はCD4+ T細胞のパイロトーシスと関節リウマチにおける組織炎症を駆動する

2024年2月20日号

デザイナー高密度リポタンパク質粒子が内皮バリア機能を強化し炎症を抑制する

T細胞におけるgp130シグナル伝達の活性化がTH17介在性の多臓器自己免疫を引き起こす

2024年2月13日号

GPCRキナーゼはその細胞内局在に応じて偏向性のCXCR3下流シグナル伝達を差次的に調節する

リラキシン-3受容体のGαi/oバイアスステープルペプチドアゴニストによるバイアスアゴニズムの機構