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複数のシグナル伝達経路によるHAD様ホスファターゼの誘導が代謝阻害剤2-デオキシグルコースに対する耐性を付与する

The induction of HAD-like phosphatases by multiple signaling pathways confers resistance to the metabolic inhibitor 2-deoxyglucose

Research Article

Sci. Signal. 03 Sep 2019:
Vol. 12, Issue 597, eaaw8000
DOI: 10.1126/scisignal.aaw8000

Quentin Defenouillère1,*, Agathe Verraes1,*, Clotilde Laussel1, Anne Friedrich2, Joseph Schacherer2, and Sébastien Léon1,†

1 Institut Jacques Monod, UMR 7592 Centre National de la Recherche Scientifique/Université Paris-Diderot, Sorbonne Paris Cité, 75205, Paris Cedex 13, France.
2 Université de Strasbourg, CNRS, GMGM UMR 7156, 67000 Strasbourg, France.

† Corresponding author. Email: sebastien.leon@ijm.fr

* These authors contributed equally to this work.

要約

腫瘍の解糖代謝を標的とする抗がん戦略が提案されている。グルコースアナログの2-デオキシグルコース(2DG)は、細胞内に輸送され、リン酸化された後、解糖系を阻害する毒性副産物である2DG-6-リン酸になる。われわれは、酵母をモデルとして、バイアスのない質量分析に基づくアプローチにより、2DGのプロテオームに対する細胞効果を調べ、2DGに対する耐性機構を検討した。2DGへの曝露によって、2DG-6-リン酸を標的とする2つのホスファターゼが誘導され、2DGの解毒に関与することが見出された。Dog1とDog2はHAD(ハロ酸脱ハロゲン化酵素)様ホスファターゼであり、進化的に保存されている。2DGは、p38 MAPKオルソログHog1を介するストレス応答経路、2DG誘導性のERストレスによって引き起こされる小胞体ストレス応答(UPR)、MAPK Slt2を介する細胞壁健全性(CWI)経路などの、いくつかのシグナル伝達経路を活性化することによって、Dog2を誘導した。UPRまたはCWI経路の欠損により、2DG過敏性が生じた。その一方、グルコース利用可能性は、AMPKオルソログSnf1を介するシグナル伝達を阻害して、DOG2 を転写的に抑制するため、グルコースによる転写の抑制が障害された変異体では、2DG耐性が認められた。自然発生2DG耐性変異体の特性解析とゲノム再シークエンシングにより、DOG2 の過剰発現が、2DG耐性の基礎にある共通の戦略であることが明らかになった。ヒトDog2ホモログHDHD1は、in vitroで2DG-6-リン酸に対してホスファターゼ活性を示し、HeLa細胞では過剰発現によって2DG耐性を付与したことから、この2DGホスファターゼが、2DGベースの化学療法を妨げる可能性が示唆された。これらの結果からは、HAD様ホスファターゼが、2DG耐性の進化的に保存された調節因子であることが示されている。

Citation: Q. Defenouillère, A. Verraes, C. Laussel, A. Friedrich, J. Schacherer, S. Léon, The induction of HAD-like phosphatases by multiple signaling pathways confers resistance to the metabolic inhibitor 2-deoxyglucose. Sci. Signal. 12, eaaw8000 (2019).

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