• ホーム
  • YorkieはマイクロRNAを介して細胞老化を阻害することによってRasに誘導される腫瘍の増悪を駆動する

YorkieはマイクロRNAを介して細胞老化を阻害することによってRasに誘導される腫瘍の増悪を駆動する

Yorkie drives Ras-induced tumor progression by microRNA-mediated inhibition of cellular senescence

Research Article

Science Signaling 01 Jun 2021:
Vol. 14, Issue 685, eaaz3578
DOI: 10.1126/scisignal.aaz3578

Takao Ito and Tatsushi Igaki*

Laboratory of Genetics, Graduate School of Biostudies, Kyoto University, Yoshida-Konoe- cho, Sakyo-ku, Kyoto 606-8501, Japan.

* Corresponding author. Email: igaki.tatsushi.4s@kyoto-u.ac.jp

要約

Rasシグナル伝達の活性化は、多くの状況において、発がんの重大な初期イベントであるが、一方で、逆説的ながらRasシグナル伝達は細胞老化を誘導し、それによって腫瘍発生を妨げる。このように、Ras活性化細胞は、がんになるには老化を克服しなければならない。われわれは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の遺伝子スクリーニングによって、ETSファミリーの転写活性化因子Pointed(Pnt)がRas活性化の際に細胞老化を引き起こすための必要十分条件であり、複眼-触覚成虫原基においてRasに誘導される腫瘍増殖を阻害することを見出した。また、さまざまな遺伝学的ツールを用いてモザイク状成虫原基を解析することにより、上皮腫瘍形成のドライバーとして高頻度でみられる細胞極性の喪失が、マイクロRNAを介したPntの阻害によって、Rasに誘導される細胞老化を抑制するという腫瘍増悪の機構を同定した。機構的には、Ras活性化細胞における極性の欠損がHippoエフェクターYorkie(Yki)の活性化を引き起こし、それによってマイクロRNAであるbantamの発現が誘導された。bantamによってE3リガーゼ関連タンパク質Tribbles(Trbl)が抑制されると、RasおよびAktに依存した転写因子FoxOの阻害が軽減された。Ras活性化細胞におけるFoxO活性の回復は、マイクロRNAであるmiR-9cおよびmiR-79の発現を誘導し、それによってpntの発現が減少し、それが細胞老化の抑制と腫瘍増悪の促進をもたらした。今回の知見は、Rasによって活性化された腫瘍が細胞老化を克服して悪性腫瘍に進行する仕組みを機構的に説明するものである。

Citation: T. Ito, T. Igaki, Yorkie drives Ras-induced tumor progression by microRNA-mediated inhibition of cellular senescence. Sci. Signal. 14, eaaz3578 (2021).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2021年6月1日号

Editors' Choice

外用抗生物質をやめるべき時?

Research Article

YorkieはマイクロRNAを介して細胞老化を阻害することによってRasに誘導される腫瘍の増悪を駆動する

呼吸器多核体ウイルス(RSウイルス)がヒト気道平滑筋細胞においてβ2アドレナリン受容体の機能不全を誘導する

最新のResearch Article記事

2025年10月28日号

腸由来のソルビトールは腸内細菌の非存在下で脂肪性肝疾患を引き起こす

2025年10月28日号

Gタンパク質中の保存されたスイッチIII領域の欠失は重篤な小児脳症を引き起こす

2025年10月21日号

損傷誘導性微小環境(ニッチ)因子Cxcl12およびShh/Ihhが頭頂骨の再生過程で縫合幹細胞の活性化を協調させる

2025年10月21日号

PARP1を介したTEAD4のポリ(ADPリボシル)化がYAP1-TEAD4複合体を安定化し、乳がん細胞の増殖と免疫回避を促進する

2025年10月14日号

E3ユビキチンリガーゼZNRF3はWNT結合FZDの選択的分解を刺激することでWNT受容体複合体の活性を制限している