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呼吸器多核体ウイルス(RSウイルス)がヒト気道平滑筋細胞においてβ2アドレナリン受容体の機能不全を誘導する

Respiratory syncytial virus induces β2-adrenergic receptor dysfunction in human airway smooth muscle cells

Research Article

Science Signaling 01 Jun 2021:
Vol. 14, Issue 685, eabc1983
DOI: 10.1126/scisignal.abc1983

Terri J. Harford1, Fariba Rezaee2, Manveen K. Gupta1, Vladimir Bokun2, Sathyamangla V. Naga Prasad1†, Giovanni Piedimonte3*†

  1. 1 Department of Cardiovascular and Metabolic Sciences, Lerner Research Institute, Cleveland Clinic Foundation, Cleveland, OH 44195, USA.
  2. 2 Department of Inflammation and Immunity, Lerner Research Institute, Cleveland Clinic Foundation, Cleveland, OH 44195, USA.
  3. 3 Departments of Pediatrics, Biochemistry and Molecular Biology, Tulane School of Medicine, New Orleans, LA 70112, USA.

* Corresponding author. Email: gpiedimonte@tulane.edu

† These authors contributed equally to this work.

要約

β2アドレナリン受容体(β22AR)の薬理学的な活性化は、アデニル酸シクラーゼを活性化して環状アデノシン一リン酸(cAMP)を生成することで気管支拡張を誘導する。喘息患者における急性気道閉塞の緩和には、通常β2AR作動薬が最も有効な戦略であるが、若年患者において呼吸器多核体ウイルス(RSV)感染が引き金となる気道閉塞には有効性がきわめて低い。本稿でわれわれは、小児肺組織由来の初代ヒト気道平滑筋細胞(HASMC)におけるβ2ARの存在量および機能に対するRSV感染の影響を調べた。その結果、HASMCのRSV感染により、プロテアーゼによるプロテアソーム介在性のβ2AR切断が生じることを明らかにした。さらにRSV感染はβ2ARリガンド非依存性のアデニル酸シクラーゼの活性も引き起こし、未感染の対照細胞と比べてcAMP合成を低下させた。最後にRSV感染はin vitroにおいて、サイトゾルのCa2+濃度の増大により気道平滑筋細胞の強い収縮を引き起こした。以上のようにこれらの結果は若年患者におけるRSV感染が、機能性のβ2ARの消失と、気道閉塞を誘導する複数の経路の活性化を同時に誘導し、正味の影響としてβ2AR作動薬誘導性の気管支拡張が相殺されることを示唆している。これらの知見は、ウイルス誘発性喘鳴の治療にβ2AR作動薬の臨床効果がみられないことの潜在的機構を示しているのみならず、より正確な治療戦略の開発への道筋を開くものである。

Citation: T. J. Harford, F. Rezaee, M. K. Gupta, V. Bokun, S. V. Naga Prasad, G. Piedimonte, Respiratory syncytial virus induces β2-adrenergic receptor dysfunction in human airway smooth muscle cells. Sci. Signal. 14, eabc1983 (2021).

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