• ホーム
  • PPARαの活性化によってアストログリアでのβアミロイドの取り込みと分解が促進される

PPARαの活性化によってアストログリアでのβアミロイドの取り込みと分解が促進される

Activation of PPARα enhances astroglial uptake and degradation of β-amyloid

Research Article

SCIENCE SIGNALING
26 Oct 2021 Vol 14, Issue 706
DOI: 10.1126/scisignal.abg4747

Sumita Raha1,†, Arunava Ghosh1,†, Debashis Dutta1, Dhruv R. Patel1, Kalipada Pahan1,2,*

  1. 1 Department of Neurological Sciences, Rush University Medical Center, Chicago, IL 60612, USA.
  2. 2 Division of Research and Development, Jesse Brown Veterans Affairs Medical Center, Chicago, IL 60612, USA.

* Corresponding author. Email: kalipada_pahan@rush.edu

† These authors contributed equally to this work.

要約

アストロサイト(星状細胞、アストログリア)は、アルツハイマー病患者の脳組織で活性化されてアミロイド(Aβ)の蓄積を誘導するグリア細胞の一種である。われわれは以前に、低用量gemfibrozil(GFB、高コレステロール治療用の承認薬)とレチノイン酸(RA、ビタミンA誘導体)を併用すると、リソソームのバイオジェネシス(新生)とオートファジー(自食)のマスターレギュレーター(主要制御因子)である転写因子EB(TFEB)をコードする遺伝子がペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)に媒介されて転写されることによって、リソソームの新生が誘導されることを明らかにした。本稿でわれわれは、同じ併用(GFB-RA)によって、アストロサイトでのAβの細胞外間隙からの取り込みとその後の分解が、PPARα依存性経路を介して促進されることを明らかにした。GFB-RAは、PPARαを介して、アストロサイト内に豊富に存在する低密度リポタンパク質受容体(LDLR)とTFEBの両方を刺激した。LDLRはAβの取り込みにきわめて重要であり、TFEBはAβの分解にきわめて重要であった。また、GFB-RA併用治療はアストロサイト内のオートファジーの流動とリソソームの活性を促進した。これらの作用と合致して、アルツハイマー病モデルマウス5XFADにGFB-RAを経口投与すると、アストログリアのPPARαに依存する形で、アステログリアの活性化が神経保護状態へと切り換わり、脳内のAβ負荷が減少し、空間学習と記憶が改善した。これらの知見は、アストログリアのAβの取り込みと分解を刺激するうえでのPPARαの新たな機能を明らかにし、アルツハイマー病に対するGFB-RA併用治療の適応外使用の可能性を示唆するものである。

Citation: S. Raha, A. Ghosh, D. Dutta, D. R. Patel, K. Pahan, Activation of PPARα enhances astroglial uptake and degradation of β-amyloid. Sci. Signal. 14, eabg4747 (2021).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2021年10月26日号

Editors' Choice

ストレスの多い記憶

Research Article

SrcファミリーキナーゼLynによるNLRP3のチロシンリン酸化はNLRP3インフラマソームの活性を抑制する

PPARαの活性化によってアストログリアでのβアミロイドの取り込みと分解が促進される

最新のResearch Article記事

2025年07月29日号

USP5はFcεRIγを脱ユビキチン化して安定化させ、IgEに誘導されるマスト細胞の活性化とアレルギー性炎症を促進する

2025年07月29日号

プロテオミクス解析により発がん性KRASシグナル伝達の標的、経路および細胞への影響を特定

2025年07月22日号

心筋細胞におけるPTP1Bの欠失は心臓の代謝シグナル伝達を変化させ、高脂肪食によって誘発される心筋症を予防する

2025年07月22日号

レポーターに基づくスクリーニングによってRAS-RAF変異を大腸がんにおける活性型RAS阻害薬耐性のドライバーとして同定

2025年07月15日号

ウイルス性脳炎マウスでは、アストロサイトのRIPK3が転写レベルでセルピンを誘導することにより保護的抗炎症活性を発揮する