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脂肪細胞におけるIP3RによるCa2+シグナル伝達の異常が、肥満において炎症を代謝調節不全に結び付ける
Aberrant Ca2+ signaling by IP3Rs in adipocytes links inflammation to metabolic dysregulation in obesity
SCIENCE SIGNALING
14 Dec 2021 Vol 14, Issue 713
DOI: 10.1126/scisignal.abf2059
Ekin Guney1,†, Ana Paula Arruda1,*,†, GÜnes Parlakgul1, Erika Cagampan1, Nina Min1, Grace Yankun Lee1, Lily Greene1, Eva Tsaousidou1, Karen Inouye1, Myoung Sook Han2, Roger J. Davis2, Gökhan S. Hotamisligil1,3,*
- 1 Sabri Ülker Center for Metabolic Research and Department of Molecular Metabolism, Harvard T.H. Chan School of Public Health, Boston, MA 02115, USA.
- 2 Program in Molecular Medicine, University of Massachusetts Medical School, Worcester, MA 01655, USA.
- 3 Broad Institute of MIT and Harvard, Cambridge, MA 02142, USA.
* Corresponding author. Email: ghotamis@hsph.harvard.edu (G.S.H.); aarruda@hsph.harvard.edu (A.P.A.)
† These authors contributed equally to this work.
要約
慢性の代謝性炎症は肥満、インスリン抵抗性および糖尿病において鍵となる特性である。本稿でわれわれは、Ca2+チャネルのイノシトール三リン酸受容体(IP3R)制御の変化が、炎症性シグナルの出現と増大に関与している脂肪細胞固有の事象であり、それによってインスリン抵抗性に至ることを明らかにした。In vitroでサイトカイン曝露により誘導された、またはin vivoで肥満により誘導された炎症は、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)に依存して脂肪細胞中のIP3Rの存在量および活性を増強し、Ca2+依存性キナーゼCaMKIIのリン酸化を亢進した。マウスにおける脂肪細胞特異的なIP3R1/2の欠損は、脂肪組織の炎症およびインスリン抵抗性からマウスを保護したが、マウスには食餌誘発性の著明な体重増加が認められた。このように本研究は、IP3R活性の増強は肥満、炎症、そしてインスリン抵抗性の間を結びつける重要な要素であることを示唆している。特にGWASによる研究からヒトの肥満においてこの遺伝子座が関与していることが示されていることから、これらのデータは、脂肪細胞におけるIP3Rを介したCa2+恒常性を標的とするアプローチが、代謝性疾患に対する新たな治療機会をもたらす可能性があることも示唆している。