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SARS-CoV-2スパイクタンパク質によって誘導される細胞融合はcGAS-STING経路とインターフェロン応答を活性化する

SARS-CoV-2 spike protein-induced cell fusion activates the cGAS-STING pathway and the interferon response

Research Article

SCIENCE SIGNALING
12 Apr 2022 Vol 15, Issue 729
DOI: 10.1126/scisignal.abg8744

Xiaoman Liu1,†, Liang Wei1,†, Fengwen Xu1, Fei Zhao1, Yu Huang1, Zhangling Fan1, Shan Mei1, Yamei Hu1, Linxuan Zhai2, Justin Guo3, Aihua Zheng4, Shan Cen5,*, Chen Liang6,*, Fei Guo1,*

  1. 1 National Health Commission of the People's Republic of China Key Laboratory of Systems Biology of Pathogens, Institute of Pathogen Biology and Center for AIDS Research, Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical College, Beijing 100730, China.
  2. 2 Department of Chemistry and Biochemistry, University of California, Los Angeles, Los Angeles, CA 90095, USA.
  3. 3 International Division, High School Affiliated to Renmin University of China, Beijing 100080, China.
  4. 4 State Key Laboratory of Integrated Management of Pest Insects and Rodents, Institute of Zoology, Chinese Academy of Sciences, Beijing 100730, China.
  5. 5 Institute of Medicinal Biotechnology, Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical College, Beijing 100005, China.
  6. 6 McGill University AIDS Centre, Lady Davis Institute, Jewish General Hospital, Montreal H3T 1E2, Canada.

* Corresponding author. Email: guofei@ipb.pumc.edu.cn (F.G.); chen.liang@mcgill.ca (C.L.); shancen@hotmail.com (S.C.)

† These authors contributed equally to this work.

STING経路をスパイクする

SARS-CoV-2の感染による重度のCOVID-19疾患の患者は、肺の過度の炎症、組織の損傷、および合胞体(融合)肺細胞の存在を呈する。Liuらは、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質を発現する培養上皮細胞が、Sタンパク質の受容体であるACE2を発現する細胞と多核合胞体細胞を形成することを発見した。融合細胞にはDNA損傷と小核が見出され、小核には細胞質DNAセンサーcGASが共局在した。このことにより、アダプタータンパク質STINGの活性化が引き起こされ、I型IFNをコードする遺伝子とIFN刺激遺伝子の発現が促進された。Sタンパク質を発現するVSVに感染した細胞でも同様の影響が見られた。合わせると、これらのデータから、cGAS-STING-IFN経路の細胞融合依存的活性化が、重度のCOVID-19患者の肺に見られる過剰な炎症反応に寄与する可能性があることが明らかになった。

要約

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、前例のないコロナウイルス疾患2019(COVID-19)のパンデミックを引き起こした。COVID-19の重篤な症例は、SARS-CoV-2に感染した肺細胞の融合によって部分的に引き起こされる、過剰な量のサイトカインの産生と広範な肺損傷を特徴としている。今回我々は、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質によって引き起こされる細胞融合がI型インターフェロン(IFN)応答を誘導することを発見した。Sタンパク質のこの機能には、S1/S2およびS2'部位でのプロテアーゼによる切断が必要であった。さらに、細胞融合が核を損傷し、細胞質DNAセンサーcGASによって感知され、その下流のエフェクターSTINGの活性化につながる小核の形成をもたらすことを示した。転写調節因子IRF3のリン酸化とI型IFNをコードするIFNBの発現は、cGAS欠損融合細胞では抑制された。加えて、VSV-SARS-CoV-2による感染も、細胞融合、DNA損傷、およびIFNBのcGAS-STING依存的発現を誘発した。合わせると、これらの結果は、SARS-CoV-2感染に対するIFN応答の基となる経路を明らかにする。これらのデータは、COVID-19患者の肺の融合肺細胞がIFNや他のサイトカインの産生を増強し、疾患の重症度を悪化させる機構を示唆する。

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