細菌が腫瘍細胞を益する

Bacteria benefit tumor cells

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
12 Apr 2022 Vol 15, Issue 729
DOI: 10.1126/scisignal.abq4492

AMY E. BAEK

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

A. Fu, B. Yao, T. Dong, Y. Chen, J. Yao, Y. Liu, H. Li, H. Bai, X. Liu, Y. Zhang, C. Wang, Y. Guo, N. Li, S. Cai, Tumor-resident intracellular microbiota promotes metastatic colonization in breast cancer. Cell185, 1356-1372 (2022).
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細胞内の細菌が循環腫瘍細胞の生存を促進する。

新たなエビデンスから、さまざまながんにおいて宿主細菌叢が腫瘍の進行に影響を及ぼすこと、細菌叢はかつて完全に無菌と考えられていた腫瘍の構成成分であること、原発腫瘍に付随する細菌集団はその関連を遠隔転移部位で維持していることが、明らかになっている。さらに、細菌を腫瘍内に導入することで、腫瘍の進行が促進される可能性がある。Fuらは、ヒトがんの進行をよりよく再現する自然発生乳がん転移マウスモデルにおいて、腫瘍細胞と腫瘍内細菌の関連を調べた。マウス乳腺組織にはヒト乳腺組織と一致する微生物群集が豊富に存在し、細菌は乳腺腫瘍細胞のサイトゾル内で生存していた。腫瘍に関連する微生物のほとんどが細胞内に存在した。著者らは、腸内細菌叢と腫瘍内細菌叢の両方または腫瘍内細菌叢のみを標的とする抗体療法を確立した。腫瘍内細菌叢を除去すると、原発腫瘍の増殖に影響はなかったが、肺における転移性結節の形成が抑制された。検出可能な腸内細菌叢をもたないマウスに、細菌を含有する腫瘍を移植し、水または抗生物質を与えたところ、前の結果と同様、腫瘍重量に差は認められなかったが、抗生物質を投与したマウスでは転移が抑制された。腫瘍に関連する細菌は転移の促進に関与していたため、循環腫瘍細胞(CTC)を解析した。クラスター化したCTCには、原発腫瘍と比べて細菌が豊富に認められたことから、CTCにおいて細菌の存在が利益をもたらすことが示唆された。Staphylococcus xylosusゲノムに挿入したエリスロマイシン耐性配列‐GFPカセットによって、細菌を追跡した。腫瘍内に注射すると、肺の転移性細胞塊に細菌が検出されたが、転移のない肺では細菌は検出されなかった。尾静脈内に注射すると、肺において腫瘍細胞も存在する場合のみ、細菌が検出されたことから、細菌の定着に腫瘍細胞が必要であることが示唆された。著者らはさらに、細菌を原発腫瘍内に注射した場合も転移が誘発されること、ドキシサイクリンを投与した腫瘍ではこのような反応は認められないことを見出した。低転移、低細菌叢のマウスモデル(MMTV-Wnt)への細菌の導入は、転移が促進されるために十分だった。細菌が侵入したがん細胞の単一細胞RNA-seq解析により、流体せん断応力経路の活性化が示された。細菌が侵入した腫瘍細胞は、細菌の存在しない腫瘍細胞と比べて、生理的せん断応力に曝されたときに、生存率が高く、ストレスファイバー形成が少なかった。ストレスファイバー形成におけるRasホモロジーファミリーメンバーA(RhoA)の既知の役割と一致して、細菌の腫瘍細胞侵入により、RhoAとRho関連プロテインキナーゼ(ROCK)の活性化も抑制された。RhoAシグナル伝達の阻害により、in vivoでの転移性コロニー形成も促進された。これらの結果は、乳腺腫瘍特異的細菌叢とCTCの間の相互作用と、この関連がCTCの生存に役立ち、転移を促進する仕組みに関して、生理学的に重要な洞察を提供するものである。

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