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浸透圧ストレスは細胞膜Na+/H+交換輸送体を介して細胞質pHを上昇させることによってRIPK3/MLKLに媒介されるネクロトーシスを活性化する

Osmotic stress activates RIPK3/MLKL-mediated necroptosis by increasing cytosolic pH through a plasma membrane Na+/H+ exchanger

Research Article

SCIENCE SIGNALING
17 May 2022 Vol 15, Issue 734
DOI: 10.1126/scisignal.abn5881

Wenbin Zhang1,2,3, Weiliang Fan2,3, Jia Guo2,3, Xiaodong Wang2,3,*

  1. 1 School of Life Sciences, Peking University, Beijing 100871, China.
  2. 2 National Institute of Biological Sciences, 7 Science Park Road, Zhongguancun Life Science Park, Beijing 102206, China.
  3. 3 Tsinghua Institute of Multidisciplinary Biomedical Research, Tsinghua University, Beijing 100084, China.

* Corresponding author. Email: wangxiaodong@nibs.ac.cn

ネクロトーシスを活性化させるベーシック(塩基性)な方法

ネクロトーシスは、キナーゼRIPK1を必要とすることが以前に同定されている制御された細胞死経路で、キナーゼRIPK3をリン酸化して活性化させ、RIPK3エフェクターMLKLによって細胞膜の破裂を引き起こす。Zhangらは、浸透圧ストレスが直接的にRIPK3を活性化し、MLKLは必要とするがRIPK1は必要としない形でネクロトーシスを促進することを明らかにした。浸透圧ストレスは、Na+/H+交換輸送体SLC9A1を介して細胞内pHを上昇させた。また、RIPK3は、細胞内pHが塩基性寄りの非生理的な値に調整された細胞で活性化された。このように、ネクロトーシスは、浸透圧ストレス下にある細胞で生じる細胞内pHの上昇によって、RIPK1によるRIPK3の活性化を迂回するRIPK3およびMLKLに依存した経路を介して誘導されることがわかった。

要約

ネクロトーシスは、腫瘍壊死因子ファミリーサイトカインなどの刺激によって引き起こされる細胞死の一形態であり、RIPK1-RIPK3-MLKL経路を介して壊死性細胞死を誘導する。本稿でわれわれは、ネクロトーシスが細胞外浸透圧ストレスによっても活性化されることを報告する。以前に同定されたネクロトーシスの誘導因子とは異なり、浸透圧ストレスは、Na+/H+交換輸送体SLC9A1を介した細胞質pHの上昇によって、RIPK3のキナーゼ活性を直接的に活性化させることでネクロトーシスを促進する。SLC9A1をノックアウト、ノックダウン、または化学的に阻害すると、浸透圧ストレスによって誘導されるネクロトーシスは遮断された。また、細胞内pHを生理的な値よりも高い値に調整すると、RIPK3が直接的に活性化され、ネクロトーシスが引き起こされた。以前に同定された他のネクロトーシス刺激に細胞が応答するときには、RIPK3の活性化にはRIPK3のタンパク質相互作用ドメインであるRHIMドメインが必要だったが、浸透圧ストレスによるRIPK3の活性化には、RHIMドメインは必要なかった。このように、これらの結果は、浸透圧ストレスに応答してネクロトーシスを活性化させる経路を明らかにしている。

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