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パーキンソン病においてAPP細胞内ドメインはLRRK2の発現を促進してフィードフォワードの神経変性機構を可能にする

The APP intracellular domain promotes LRRK2 expression to enable feed-forward neurodegenerative mechanisms in Parkinson’s disease

Research Article

SCIENCE SIGNALING
23 Aug 2022 Vol 15, Issue 748
DOI: 10.1126/scisignal.abk3411

Zhi-Wei Zhang1,†, Haitao Tu1,†, Mei Jiang1,2,‡, Sarivin Vanan1, Sook Yoong Chia1, Se-Eun Jang1, Wuan-Ting Saw3, Zhi-Wei Ong1, Dong-Rui Ma4, Zhi-Dong Zhou3,5, Jie Xu2, Kai-Hua Guo2, Wei-Ping Yu6,7, Shuo-Chien Ling5,8, Richard A. Margolin9, Daniel G. Chain9, Li Zeng1,5,10,*, Eng-King Tan3,5,11,*

  1. 1 Neural Stem Cell Research Lab, Research Department, National Neuroscience Institute, Singapore 308433, Singapore.
  2. 2 Department of Anatomy and Neurobiology, Zhongshan School of Medicine, Sun Yat-Sen University, Guangzhou, Guangdong 510080, China.
  3. 3 Research Department, National Neuroscience Institute, Singapore General Hospital (SGH) Campus, Singapore 169856, Singapore.
  4. 4 Department of Neurology, Singapore General Hospital, Singapore 169609, Singapore.
  5. 5 Neuroscience and Behavioral Disorders Program, DUKE-NUS Graduate Medical School, Singapore 169857, Singapore.
  6. 6 Animal Gene Editing Laboratory, Biological Resource Center, A*STAR, Singapore 138673, Singapore.
  7. 7 Institute of Molecular and Cell Biology, A*STAR, Singapore 138673, Singapore.
  8. 8 Department of Physiology, Yong Loo Lin School of Medicine, National University of Singapore, Singapore 119077, Singapore.
  9. 9 CereSpir Incorporated, New York, NY 10010, USA.
  10. 10 Centre for Molecular Neuropathology, Lee Kong Chian School of Medicine, Nanyang Technology University, Novena Campus, Singapore 308232, Singapore.
  11. 11 Department of Neurology, National Neuroscience Institute, Singapore 308433, Singapore.

* Corresponding author. Email: li_zeng@nni.com.sg (L.Z.); tan.eng.king@singhealth.com.sg (E.-K.T.)

† These authors contributed equally to this work.

‡ Present address: Department of Human Anatomy, Institute of Stem Cell and Regenerative Medicine, Dongguan Campus, Guangdong Medical University, Dongguan 523808, China.

神経変性に陥る

キナーゼLRRK2の活性化突然変異は、一部の患者においてパーキンソン病(PD)の原因となる。変異LRRK2は、APPから転写活性型であるAPP細胞内ドメイン(AICD)へのプロセシングを促進することができる。Zhangらは、これらのタンパク質が自己永続的なサイクルで結びついていることを示した。PDマウスモデルに由来する培養ニューロンおよび脳組織では、LRRK2を介するAPPのリン酸化によってAICDの存在量と活性が増加し、続いてAICDがLRRK2の転写を直接仲介した。LRRK2変異PDモデルにおける病理学的マーカーが、アルツハイマー病の治療薬として現在試験が行われている低分子阻害剤イタナプラセド(itanapraced)を用いたAICDの標的化によって、低下した。これらの結果は、LRRK2とAICDが相互に結びついていることと、イタナプラセドがPDの治療上有効である可能性を明らかにしている。

要約

ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)遺伝子の機能獲得型変異は、進行性の神経変性による運動および認知機能障害を特徴とする家族性のパーキンソン病(PD)において、高頻度に認められる。われわれは以前に、LRRK2を介するβ-アミロイド前駆体タンパク質(APP)のリン酸化により、APP細胞内ドメイン(AICD)の生成と核移行が引き起こされることを示した。今回われわれは、LRRK2を介する神経毒性を増強するフィードフォワードサイクルにおいて、LRRK2とAICDを結びつけた。転写因子FOXO3aと協同して、AICDはLRRK2の発現を促進することにより、AICD活性化を促進するLRRK2の存在量を増加させた。LRRK2G2019Sマウスでは APP欠損によって、PDにおける毒性およびドパミン作動性ニューロンの脱落に関連する表現型である、LRRK2発現、LRRK2を介するミトコンドリア機能不全、α-シヌクレイン蓄積、脳内のチロシン水酸化酵素(TH)欠損が抑制された。逆に、AICD過剰発現によって、LRRK2G2019SマウスではLRRK2の発現とLRRK2を介する神経毒性が増強された。LRRK2G2019Sマウスにおいて、またはLRRK2G2019S患者に由来する培養ドパミン作動性ニューロンにおいて、イタナプラセド(itanapraced)の投与によりLRRK2発現が低下し、神経保護効果が認められた。イタナプラセドは神経毒誘発PDマウスモデルでも同様の効果を示したことから、AICDの阻害が特発性PDに対しても治療上有効である可能性が示唆された。われわれの結果は、治療的に標的化可能な、PDにおいてAICDがLRRK2を介する神経毒性を促進するフィードフォワード機構を明らかにしている。

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