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PI(4,5)P2に刺激される正のフィードバックがWnt-βカテニンシグナル伝達においてFrizzledへのDishevelledの動員を駆動する

PI(4,5)P2-stimulated positive feedback drives the recruitment of Dishevelled to Frizzled in Wnt-β-catenin signaling

Research Article

SCIENCE SIGNALING
23 Aug 2022 Vol 15, Issue 748
DOI: 10.1126/scisignal.abo2820

Jacob P. Mahoney, Elise S. Bruguera, Mansi Vasishtha, Lauren B. Killingsworth, Saw Kyaw, William I. Weis*

Departments of Structural Biology and Molecular and Cellular Physiology, Stanford University School of Medicine, Stanford, CA 94035, USA.

* Corresponding author. Email: bill.weis@stanford.edu

リン脂質に駆動されるWntシグナル伝達

Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーのメンバーである受容体FzdのWnt刺激は、細胞質エフェクターDvlのFzdへの動員と、Dvl関連脂質キナーゼによって生成されるPI(4,5)P2に依存する機構を介して、転写因子βカテニンを安定化させる。Mahoneyらは、脂質ナノディスク内および細胞内でのアッセイを用いて、DvlのFzdへの動員にはPI(4,5)P2が必要で、リガンドが不在でも動員が起こることを示した。リガンドに誘導される立体構造変化によって下流のGタンパク質の動員が刺激される他のGPCRとは対照的に、リガンドが存在してもFzdのDvlへの親和性は増加しなかった。このように、高Fzd-Dvl親和性は、リガンドに誘導されるFzdの立体構造変化ではなく、Dvl関連脂質キナーゼによるPI(4,5)P2産生量の局所的なリガンド誘導性の増加に依存しているように思われる(AngersらによるFocus参照)。

要約

Wnt-βカテニン経路では、Frizzled(Fzd)と、LRP5またはLRP6(LRP5/6)共受容体へのWntの結合が、細胞質エフェクターDishevelled(Dvl)を動員することによって転写コアクチベーターβカテニンの分解を抑制する。細胞膜でDvlが重合するとβカテニン破壊複合体が動員され、βカテニンの分解の抑制における重要な段階であるLRP5/6のリン酸化が可能になる。脂質ナノディスク内で再構成された精製Fzdタンパク質を用いて、われわれは、細胞膜へのDvlの動員を促進する因子を調べた。そして、細胞外リガンドの結合が下流のトランスデューサーに対する親和性に影響するGPCRスーパーファミリーの他のメンバーとは対照的に、FzdのDvlへの親和性はWntリガンドによって影響されないことを明らかにした。その代わり、Fzd-Dvl結合は、Wntに応答してDvl関連脂質キナーゼによって生成され、LRP5/6のリン酸化に必要とされる、脂質PI(4,5)P2の濃度上昇によって促進された。さらに、Fzdへの結合は、Fzdの下流のシグナル伝達に必要であると提唱されているDvlのDEPドメイン二量化を促進しなかった。これらの知見は、Wntに刺激される局所的なPI(4,5)P2産生がDvlの動員とさらなるPI(4,5)P2産生を促進してDvlの重合、LRP5/6のリン酸化、βカテニンの安定化を支持する正のフィードバックループを示唆している。

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