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小腸陰窩のクリアランスには細胞内顆粒の破裂と腸細胞のイオン輸送を介した杯細胞の粘液分泌が関与する
Clearance of small intestinal crypts involves goblet cell mucus secretion by intracellular granule rupture and enterocyte ion transport
SCIENCE SIGNALING
20 Sep 2022 Vol 15, Issue 752
DOI: 10.1126/scisignal.abl5848
Brendan Dolan, Anna Ermund, Beatriz Martinez-Abad, Malin E. V. Johansson, Gunnar C. Hansson*
Department of Medical Biochemistry and Cell Biology, University of Gothenburg, 405 30 Gothenburg, Sweden.
* Corresponding author. Email: gunnar.hansson@medkem.gu.se
陰窩の浄化
細菌は小腸の粘液には侵入できるが、陰窩は絶え間ない粘液分泌と上皮由来の抗菌因子のおかげで無菌状態を保っている。アセチルコリンは、杯細胞による粘液分泌などの腸上皮機能の多くの側面に関与している。Dolanらは、回腸の摘出片とオルガノイドを用いて、コリン作動性刺激が粘液顆粒の完全性喪失、細胞内粘液の膨張、杯細胞の細胞膜の破裂を特徴とする特有の分泌様式を誘発することを明らかにした。隣接する腸細胞のギャップ結合とイオン輸送が、粘液の放出と陰窩への液の放出を同調させ、さらなる粘液の膨張と陰窩の洗浄を引き起こした。これらの知見は、陰窩を浄化し、陰窩の無菌状態の維持に寄与している可能性のある、特有の大量分泌イベント(Weigertによる注目論文参照)を同定するものである。
要約
小腸陰窩の杯細胞には、多数のムチン顆粒が含まれ、陰窩から細菌を排除するために急速に放出される。神経細胞および非神経細胞から放出されるアセチルコリンは小腸上皮機能の多くの側面を調節していることから、われわれは、組織摘出片とオルガノイドを用いて、コリン作動性刺激に対する小腸陰窩の応答を調べた。ムスカリン性アセチルコリン受容体を活性化させると、同調的かつ迅速に陰窩杯細胞の空胞化が開始され、陰窩の内容物が腸管腔へと洗い流された。コリン作動性刺激は顆粒内容物の膨張を誘導し、その後、細胞内のムチン顆粒の破裂を引き起こした。粘液は、杯細胞の頂端膜が破裂する前に細胞内で膨張し、陰窩の内腔に放出されたあとも膨張し続けた。杯細胞は膜破裂から回復し、ムチン顆粒の貯蔵は補充された。杯細胞からの粘液分泌はCa2+シグナル伝達に依存し、陰窩内の粘液膨張は杯細胞に隣接する腸細胞のギャップ結合、イオン輸送、水輸送に依存した。われわれが「膨張分泌」と呼ぶこのような特有の粘液分泌様式は、杯細胞と腸細胞による同調した粘液分泌、イオン分泌、体液分泌を介して、小腸陰窩を効率よく洗浄する。