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HIV-1タンパク質Nefは分子間のSH3-SH2ドメイン相互作用を安定化させることによってTecファミリーキナーゼBtkを活性化する
The HIV-1 protein Nef activates the Tec family kinase Btk by stabilizing an intermolecular SH3-SH2 domain interaction
SCIENCE SIGNALING
20 Sep 2022 Vol 15, Issue 752
DOI: 10.1126/scisignal.abn8359
Manish Aryal1, David Lin2, Kiera Regan1, Shoucheng Du1, Haibin Shi1, John J. Alvarado1, Tatiana V. Ilina3, Amy H. Andreotti2, Thomas E. Smithgall1,*
- 1 Department of Microbiology and Molecular Genetics, University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, PA 15219, USA.
- 2 Roy J. Carver Department of Biochemistry, Biophysics and Molecular Biology, Iowa State University, Ames, IA 50011, USA.
- 3 Department of Structural Biology, University of Pittsburgh School of Medicine, Pittsburgh, PA 15260, USA.
* Corresponding author. Email: tsmithga@pitt.edu
HIVはどのようにしてBtkを乗っ取るのか
ウイルスは、ある部分では、宿主のシグナル伝達経路を破壊することによって複製の成功を確実にする。生化学および細胞アッセイを用いて、Aryalらは、HIV-1タンパク質Nefが、骨髄細胞におけるHIV-1の複製に重要な、TecファミリーキナーゼのBtkを活性化する仕組みを見出した。BtkのSH2ドメインのPro327を介するSH3ドメインとSH2ドメインの分子間相互作用によってBtkホモ二量体が形成され、Nefホモ二量体は、このBtkホモ二量体を安定化させることによって、Btkの自己リン酸化を可能にした。この機構は、Btkが通常、細胞内で活性化される仕組みや、NefがSrcキナーゼファミリーを活性化する仕組みとは異なることから、これまで認識されていなかったTecファミリーキナーゼ調節様式が示唆されるとともに、Nefは独立した機構を介してチロシンキナーゼ活性化を誘導する可能性が示された。
要約
ウイルスのHIV-1およびSIVによって産生されるNefタンパク質は、一部では、SrcおよびTecファミリーのメンバーを含む、宿主細胞のチロシンキナーゼの恒常的活性化を誘導することによって、効率的なウイルス複製を促進する。今回われわれは、HIV-1 NefとSIV Nefの両方が、in vitroおよび細胞内で、TecファミリーキナーゼBtkの活性を増強することを見出した。SrcファミリーキナーゼのSH3ドメインに結合できないNef変異体は、野生型Nefと同程度にBtkを活性化したことから、NefはSrcファミリーキナーゼとTecファミリーキナーゼを異なる機構により活性化することが示された。BtkのSH3-SH2領域は、SH2ドメイン内のCDループを必要とするホモ二量体を形成し、この二量体はNefホモ二量体の結合によって安定化された。Btk SH2ドメインのCDループのPro327がアラニンに置換されると、SH3-SH2二量体が不安定化し、Nefとの相互作用が消失し、in vitroでのNefによる活性化が無効となった。細胞内では、Nefは細胞膜で野生型Btkホモ二量体を安定化させ、活性化させたが、P327A Btkホモ二量体にはそのような作用を及ぼさなかった。これらのデータは、Nefとの相互作用によりSH3-SH2界面を介してBtk二量体が安定化され、キナーゼ活性が促進されることを明らかにしており、HIV-1 Nefタンパク質が、ウイルス複製を促進するために、SrcファミリーとTecファミリーのチロシンキナーゼを活性化する別個の機構を発達させたことを示している。