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共通のFcRγ鎖を介したシグナル伝達の動態が樹状細胞のサイトカインプロファイルを決定する

The kinetics of signaling through the common FcRγ chain determine cytokine profiles in dendritic cells

Research Article

SCIENCE SIGNALING
7 Mar 2023 Vol 16, Issue 775
DOI: 10.1126/scisignal.abn9909

Miyuki Watanabe1, 2, Daisuke Motooka3, 4, Sho Yamasaki1, 2, 5, 6, 7 *

  1. 1 Department of Molecular Immunology, Research Institute for Microbial Diseases, Osaka University, Osaka 565-0871, Japan.
  2. 2 Laboratory of Molecular Immunology, Immunology Frontier Research Center (IFReC), Osaka University, Osaka 565-0871, Japan.
  3. 3 Department of Infection Metagenomics, Research Institute for Microbial Diseases, Osaka University, Osaka 565-0871, Japan.
  4. 4 Integrated Frontier Research for Medical Science Division, Institute for Open and Transdisciplinary Research Initiatives (OTRI), Osaka University, Osaka 565-0871, Japan.
  5. 5 Center for Infectious Disease Education and Research (CiDER), Osaka University, Osaka 565-0871, Japan.
  6. 6 Division of Molecular Design, Medical Institute of Bioregulation, Kyushu University, Fukuoka 812-8582, Japan.
  7. 7 Division of Molecular Immunology, Medical Mycology Research Center, Chiba University, Chiba 260-8673, Japan.

* Corresponding author. Email: yamasaki@biken.osaka-u.ac.jp

樹状細胞のシグナル伝達にはタイミングが重要

樹状細胞はパターン認識受容体を介して病原体を検出し、これによって、たとえ共通サブユニットであるFcRγを介してシグナルを伝達するときでも、それぞれに特徴的な遺伝子発現およびサイトカイン産生の変化が引き起こされる。Watanabeらは、様々なマイコバクテリアの構成要素に対する2種類の受容体(Dectin-2およびMincle)が、FcRγを介して樹状細胞に異なる応答を引き起こすことができることを明らかにした(Blamberg and LangによるFocusも参照)。恒常的に発現し、刺激直後にFcRγを介した強力なシグナル伝達を引き起こすことができるDectin-2とは対照的に、Mincleは刺激後に発現が誘導されるため、シグナル伝達が遅れて生じる。Mincleの恒常的な発現またはキメラ型FcRγ受容体の刺激により、Dectin-2の遺伝子発現およびサイトカインプロファイルが確実かつ持続的に模倣された。このように、FcRγシグナル伝達の動態が、受容体刺激に応答して樹状細胞で生じる遺伝子発現およびサイトカイン産生の変化を決定している。-WW

要約

Fc受容体γ(FcRγ)鎖は複数の免疫受容体に共通なシグナル伝達サブユニットであるが、FcRγ共役受容体によって誘導される細胞応答は多様である。そこでわれわれは、FcRγが、樹状細胞から種々のサイトカインの放出を誘導する構造的に類似したC型レクチン受容体であるDectin-2およびMincleに共役したとき、どのように異なるシグナルを生じさせるのかという機構を検討した。刺激後のトランスクリプトームおよびエピジェネティックな変化を経時的にトレースした結果、それぞれの発現パターンを反映して、Dectin-2は初期の強力なシグナル伝達を誘導する一方、Mincleを介したシグナル伝達は遅れて生じることが明らかにされた。遺伝子操作により作成したキメラ受容体では刺激初期に強力なFcRγ-Sykシグナル伝達が得られ、Dectin-2様の遺伝子発現プロファイルが十分に再現された。初期のSykシグナル伝達はカルシウムイオン活性化転写因子NFATの活性を選択的に刺激し、これがクロマチン状態およびIl2遺伝子の転写を速やかに変化させた。一方でTNFなどの炎症促進性サイトカインは、FcRγシグナル伝達の動態に関わらず誘導された。これらの結果は、FcRγ-Sykシグナル伝達の強さおよびタイミングが、動態感知性のシグナル伝達機構を通じて細胞応答の質を変えることができること示唆している。

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