• ホーム
  • Oct1はSmadファミリーの転写因子と協調して中胚葉系譜の特異化を促進する

Oct1はSmadファミリーの転写因子と協調して中胚葉系譜の特異化を促進する

Oct1 cooperates with the Smad family of transcription factors to promote mesodermal lineage specification

Research Article

SCIENCE SIGNALING
18 Apr 2023 Vol 16, Issue 781
[DOI: 10.1126/scisignal.add5750]

Jelena Perovanovic1, 2, Yifan Wu1, 2, Hosiana Abewe2, 3, Zuolian Shen1, 2, Erik P. Hughes1, 2, Jason Gertz2, 3, Mahesh B. Chandrasekharan2, 4, Dean Tantin1, 2, *

  1. 1 Department of Pathology, University of Utah School of Medicine, Salt Lake City, UT 84112, USA.
  2. 2 Huntsman Cancer Institute, University of Utah School of Medicine, Salt Lake City, UT 84112, USA.
  3. 3 Department of Oncological Sciences, University of Utah School of Medicine, Salt Lake City, UT 84112, USA.
  4. 4 Department of Radiation Oncology, University of Utah School of Medicine, Salt Lake City, UT 84112, USA.

* Corresponding author. Email: dean.tantin@path.utah.edu

Oct1はどのようにして中胚葉の特異化を調整するのか

転写因子Oct1は、分化する胚性幹細胞(ESC)の系譜特異化に必要である。Perovanovicらは、ゲノム解析、免疫共沈降、機能実験を用いて、Oct1がマウスESCの中胚葉分化を特異的に促進する機構を検討した。Oct1は、多能性細胞においてサイレントな中胚葉特異的遺伝子に局在し、分化過程でこれらの部位にとどまり、適切な誘導のために必要とされた。Oct1は、中胚葉を誘導するSmadタンパク質にも占有されたエンハンサーに結合し、Smadと協調的に遺伝子発現を促進した。これらの結果により、中胚葉におけるSmadなどの系譜特異的因子が、Oct1を介する抑制解除を、系譜に適した遺伝子に限定する機構が同定されている。—AMV

要約

多能性状態と組織特異的状態のあいだの移行は、発生の重要な側面である。これらの移行を推進する経路を理解することで、実験や治療に使用できる適切に分化した細胞の作製が促進される。今回われわれは、中胚葉の分化過程で、転写因子Oct1が、多能性細胞ではサイレントな、発生系譜に適した遺伝子を活性化することを示した。Oct1を誘導性にノックアウトしたマウス胚性幹細胞(ESC)を用いて、Oct1欠損により中胚葉特異的遺伝子の誘導が不十分となり、中胚葉および最終筋分化が障害されることを示した。Oct1欠損細胞は、系譜特異的遺伝子の誘導の時間的協調性が不十分で、不適切な発生系譜分岐を示し、上皮の特性を保持した低分化の細胞状態になった。ESCにおいて、Oct1は多能性因子Oct4とともに中胚葉関連遺伝子に局在し、Oct4の解離後の分化過程でもこれらの部位に結合したままであった。Oct1の結合事象は、ヒストンリジン脱メチル化酵素Utxの結合事象と重なっており、Oct1とUtxの相互作用から、これら2つのタンパク質が協調して遺伝子発現を活性化することが示唆された。広範に分布するOct1が中胚葉遺伝子の誘導に特異性を示すことは、中胚葉特異的遺伝子におけるSmadおよびOct結合部位の高頻度の共存と、中胚葉遺伝子転写のOct1とSmad3による協調的な刺激によって、部分的に説明されると考えられる。総合すると、これらの結果から、Oct1は中胚葉系譜特異的遺伝子誘導の重要なメディエーターとして同定される。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2023年4月18日号

Editors' Choice

杯細胞のストレス管理

Research Article

Oct1はSmadファミリーの転写因子と協調して中胚葉系譜の特異化を促進する

ヒト粘膜関連インバリアントT細胞の増殖にはMYC-SLC7A5‐解糖系の代謝軸が必要

最新のResearch Article記事

2025年09月09日号

フソバクテリウム・ヌクレアタムは酪酸駆動型エピジェネティック機構を通じてアンフェタミン誘導行動応答を増強する

2025年09月02日号

一次感覚ニューロンのGαqシグナル伝達がオピオイドの鎮痛作用をNMDA受容体誘導性の耐性および痛覚過敏に変化させる

2025年09月02日号

MAPKおよびmTORC1シグナル伝達は収束してサイクリンD1タンパク質の産生を駆動することによってメラノーマのパーシスター(残存)細胞における細胞周期の再開を可能にしている

2025年08月26日号

大腸菌(Escherichia coli)のストレス誘導性低分子タンパク質の解析により、YoaIが別個のシグナル伝達系間のクロストークを調節することが明らかに

2025年08月19日号

Hox-C12はβ2-アドレノセプターのcAMP/カルシウムフィードフォワードループとの共役を調整してトリプルネガティブ乳がんの浸潤を促進する