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マクロファージのACE2はSARS-CoV-2の複製に必要であり、その後の持続的なウイルス粒子放出を抑制するサイトカイン応答にも必要である

Macrophage ACE2 is necessary for SARS-CoV-2 replication and subsequent cytokine responses that restrict continued virion release

Research Article

SCIENCE SIGNALING
25 Apr 2023 Vol 16, Issue 782
[DOI: 10.1126/scisignal.abq1366]

Larisa I. Labzin1, 2, 3, *, Keng Yih Chew4, Kathrin Eschke1, Xiaohui Wang1, 2, Tyron Esposito1, 2, Claudia J. Stocks1, 2, James Rae1, 5, Ralph Patrick1, Helen Mostafavi1, Brittany Hill1, Teodor E. Yordanov1, Caroline L. Holley1, 2, Stefan Emming1, 2, Svenja Fritzlar6, Francesca L. Mordant6, Daniel P. Steinfort7, 8, Kanta Subbarao6, 9, Christian M. Nefzger1, Anne K. Lagendijk1, Emma J. Gordon1, Robert G. Parton1, 5, Kirsty R. Short3, 4, Sarah L. Londrigan6, †, Kate Schroder1, 2, 3, 4, †

  1. 1 Institute for Molecular Bioscience (IMB), University of Queensland, Brisbane, QLD 4072, Australia.
  2. 2 IMB Centre for Inflammation and Disease Research, University of Queensland, Brisbane, QLD 4072, Australia.
  3. 3 Australian Infectious Diseases Research Centre, University of Queensland, Brisbane, QLD 4072, Australia.
  4. 4 School of Chemistry and Molecular Biosciences, University of Queensland, Brisbane, QLD 4072, Australia.
  5. 5 Centre for Microscopy and Microanalysis, University of Queensland, Brisbane, QLD 4072, Australia.
  6. 6 Department of Microbiology and Immunology, University of Melbourne at the Peter Doherty Institute for Infection and Immunity, Melbourne, VIC 3000, Australia.
  7. 7 Department of Medicine, University of Melbourne, Parkville, VIC 3010, Australia.
  8. 8 Department of Respiratory Medicine, Royal Melbourne Hospital, Parkville, VIC 3052, Australia.
  9. 9 WHO Collaborating Centre for Reference and Research on Influenza, Victorian Infectious Diseases Reference Laboratory at the Peter Doherty Institute for Infection and Immunity, Melbourne, VIC 3000, Australia.

† These authors contributed equally to this work.

* Corresponding author. Email: l.labzin@uq.edu.au

ACE2を介する感染時のみ発揮する抗ウイルス作用

マクロファージは感染に対する重要な初期応答細胞であるが、特にSARS-CoV-2感染患者においては、重度の炎症の促進にも関与する。SARS-CoV-2受容体とされるACE2を有する肺常在性マクロファージは比較的少ないことから、Labzinらは、これらの細胞のウイルス感染に対する応答におけるACE2の役割を検討した。SARS-CoV-2はすべての培養マクロファージに感染したが、ACE2を発現するように改変されたマクロファージでのみ複製し、抗ウイルスサイトカイン応答を誘導したことがわかった。これらの結果は、肺のACE2陽性マクロファージとACE2陰性マクロファージは、患者の感染に対する応答の違いに寄与する可能性があることを示唆している。—LKF

要約

マクロファージは、SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる疾患であるCOVID-19の病因に寄与する主要な細胞性因子である。SARS-CoV-2侵入受容体であるACE2は、ヒトにおけるSARS-CoV-2感染部位で一部のマクロファージにのみ存在する。今回われわれは、SARS-CoV-2はマクロファージに侵入し、複製し、新たなウイルス子孫を放出できるのか、マクロファージはサイトカイン放出を促進するために複製ウイルスを感知する必要があるのか、もしそうであるならば、これらの機構にACE2は関与しているのかを検討した。SARS-CoV-2はACE2欠損ヒト初代培養マクロファージ内に侵入することができたが、細胞内で複製せず、炎症性サイトカインの発現を誘導しないことがわかった。一方、ヒトTHP-1由来マクロファージにおけるACE2の過剰発現により、SARS-CoV-2の侵入、プロセシングと複製、さらにウイルス粒子放出が可能になった。ACE2を過剰発現するTHP-1マクロファージは、活発なウイルス複製を感知し、キナーゼTBK-1によって仲介される炎症促進性の抗ウイルスプログラムを始動させて、持続的なウイルスの複製と放出を抑制した。これらの結果は、SARS-CoV-2感染に対するマクロファージ応答におけるACE2とその欠損の役割を解明することに役立つ。

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