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ヒト感染コロナウイルス由来パパイン様プロテアーゼの基質選択性は自然免疫抑制と相関する

The substrate selectivity of papain-like proteases from human-infecting coronaviruses correlates with innate immune suppression

Research Article

SCIENCE SIGNALING
2 May 2023 Vol 16, Issue 783
[DOI: 10.1126/scisignal.ade1985]

Yuxian Xiong1, 2, †, Bin Huang1, †, Ying Yang1, Xinming Fu1, Ziyang Fu1, Huidong Xu1, Ming Liu1, Dan Cao1, Manman Zhang1, Haibin Yang3, Xiaogang Niu4, Cong Yu3, Hao Huang1, 2, *

  1. 1 State Key Laboratory of Chemical Oncogenomics, Guangdong Provincial Key Laboratory of Chemical Genomics, Laboratory of Structural Biology and Drug Discovery, Laboratory of Ubiquitination and Targeted Therapy, School of Chemical Biology and Biotechnology, Peking University Shenzhen Graduate School, Shenzhen, Guangdong 518055, China.
  2. 2 Institute of Chemical Biology, Shenzhen Bay Laboratory, Shenzhen, Guangdong 518132, China.
  3. 3 Department of Biology, School of Life Sciences, Southern University of Science and Technology, Shenzhen, Guangdong 518055, China.
  4. 4 College of Chemistry and Molecular Engineering, Beijing Nuclear Magnetic Resonance Center, Peking University, Beijing 100871, China.

* Corresponding author. Email: huang.hao@pku.edu.cn

† These authors contributed equally to this work.

パパイン様プロテアーゼとコロナウイルスの病原性

SARS-CoV-2などの高病原性コロナウイルスに由来するパパイン様プロテアーゼ(PLP)は、脱ユビキチン化活性と脱ISG15化活性を有し、これらの活性によって自然免疫シグナル伝達経路を妨害できる。Xiongらは、低病原性コロナウイルス由来のPLPの脱ユビキチン化活性と脱ISG15化活性を同定して特徴を明らかにすることによって、PLPの酵素特性と病原性との関連を明らかにした。高病原性コロナウイルス由来のPLPとは対照的に、低病原性コロナウイルス由来のPLPはISG15よりもユビキチンに選好性を示した。このような基質選好性の構造的基礎は、低病原性HCoV-HKU1由来のPLP2の結晶構造によって明らかにされた。すべてのPLPが異なる程度で自然免疫シグナル伝達経路を阻害したが、問題となっているSARS-CoV-2変異株に由来するPLPなど、高病原性ウイルス由来のPLPは、阻害の程度がより強かった。このような差異が、コロナウイルス間の免疫回避や病原性の差異に関与している可能性がある。—AMV

要約

ヒトに感染可能なコロナウイルスは、普通の風邪を引き起こすこともあれば(HCoV-NL63、HCoV-229E、HCoV-HKU1、HCoV-OC43)、重度の呼吸器症状を引き起こすこともある(SARS-CoV-2、SARS-CoV、MERS-CoV)。SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS-CoV、HCoV-NL63のパパイン様プロテアーゼ(PLP)は、ウイルスによる自然免疫回避で機能し、脱ユビキチン化(DUB)活性と脱ISG15化活性を有する。われわれは、HCoV-229E、HCoV-HKU1、HCoV-OC43のPLPを同定し、その酵素特性が自然免疫応答を抑制する能力と相関することを明らかにした。保存された非触媒性のアスパラギン酸残基が、DUB活性と脱ISG15化活性の両方にとってきわめて重要であったが、ユビキチン鎖切断選択性も、ユビキチン基質、K48結合ジユビキチン基質、インターフェロン応答遺伝子15(ISG15)基質との結合親和性も、PLPによって異なっていた。ユビキチンと複合体を形成したHKU1-PLP2の結晶構造によって結合界面が明らかにされ、PLPとユビキチンの間の結合親和性が異常に高い理由が説明された。細胞アッセイでは、重度の疾患を引き起こすコロナウイルス由来のPLPは自然免疫のIFN-IとNF- κBシグナル伝達を強く抑制し、オートファジーを促進したが、軽度の疾患を引き起こすコロナウイルス由来のPLPは全般的に、免疫抑制とオートファジー誘導への影響が比較的弱かった。さらに、問題になっているSARS-CoV-2変異株の1つに由来するPLPは、自然免疫シグナル伝達経路をより強く抑制した。全体として、これらの結果から、PLPのDUBおよび脱ISG15化活性とその基質選択性が差次的にウイルスの自然免疫回避に関与し、ウイルスの病原性に影響している可能性があることが示された。

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