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TRPM7キナーゼ活性はアミロイド-β分解を誘導し、アルツハイマー病マウスモデルにおけるシナプス機能障害と認知障害を改善する

TRPM7 kinase activity induces amyloid-β degradation to reverse synaptic and cognitive deficits in mouse models of Alzheimer’s disease

Research Article

SCIENCE SIGNALING
11 Jul 2023 Vol 16, Issue 793
[DOI: 10.1126/scisignal.ade6325]

Shimeng Zhang, Feifei Cao, Wei Li*, Nashat Abumaria*

State Key Laboratory of Medical Neurobiology and MOE Frontiers Center for Brain Science, Institutes of Brain Science, Fudan University, Shanghai 200032, China.

* Corresponding author. Email: abumaria@fudan.edu.cn (N.A.); leewei@fudan.edu.cn (W.L.)

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

アルツハイマー病(AD)患者の死後脳検体では、二重機能をもつイオンチャネル・キナーゼのTRPM7の存在量が減少している。ZhangらはADにおけるTRPM7喪失の病理学的役割を明らかにした。アミロイド-β誘導性の病理をモデル化したマウスにおいて、TRPM7のキナーゼ部分(M7CKと呼ばれる)を過剰発現させると、老齢マウスではシナプス形成と認知機能が回復し、発症前の比較的幼若なマウスではシナプス形成と認知機能が維持された。M7CKは、アミロイド-βの分解と除去を促進するプロテアーゼMMP14を、直接活性化した。これらの知見は、AD患者におけるTRPM7の喪失とアミロイド病理との機構的関連性を示していると考えられる。—Leslie K. Ferrarelli

要約

二重機能をもつ一過性受容体電位メラスタチン様7(TRPM7)タンパク質の存在量および活性の変化は、アルツハイマー病(AD)をはじめとする神経変性疾患と関連している。また、ニューロンにおけるアミロイド-β(Aβ)の有害な凝集は、ADの病理と関連している。本稿でわれわれは、TRPM7のキナーゼ活性がAβの分解の刺激に重要であることを見いだした。AD患者および2種類のADマウスモデル(APP/PS1および5XFAD)由来の海馬組織検体において、TRPM7の発現は低下していた。マウス培養海馬ニューロンにおいて、完全長のTRPM7またはその機能性のキナーゼドメインM7CKの過剰発現は,外因性Aβにより誘導されるシナプス消失を阻害した。一方でこのような神経保護は、機能性のイオンチャネル部分のみ、またはキナーゼ活性を欠損したTRPM7変異体の過剰発現によっては得ることができなかった。5XFADマウスの海馬におけるM7CKの過剰発現は、記憶障害、シナプス消失およびAβプラークの蓄積を、若年マウスでは阻止し、老齢マウスでは改善した。M7CKは、ニューロンおよびマウスの両方においてメタロプロテアーゼMMP14と相互作用してこれを活性化し、Aβ分解を促進した。このように、AD患者におけるTRPM7の欠損は、それに伴うAβの病理に寄与していると考えられる。

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