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ウイルスにコードされたGPCRはSK1-S1P1シグナル伝達軸のフィードフォワード活性化を介して神経膠芽腫を駆動する

A virally encoded GPCR drives glioblastoma through feed-forward activation of the SK1-S1P1 signaling axis

Research Article

SCIENCE SIGNALING
15 Aug 2023 Vol 16, Issue 798
[DOI: 10.1126/scisignal.ade6737]

Nick D. Bergkamp1, †, Jeffrey R. van Senten1, †, Hendrik J. Brink1, Maarten P. Bebelman1, Jelle van den Bor1, Tuğçe S. Çobanoğlu2, Kasper Dinkla3, Johannes Köster4, 5, Gunnar Klau6, Marco Siderius1, Martine J. Smit1, *

  1. 1 Amsterdam Institute for Molecular and Life Sciences (AIMMS), Division of Medicinal Chemistry, Faculty of Science, Vrije Universiteit Amsterdam, Amsterdam, Netherlands.
  2. 2 Department of Chemistry and Pharmaceutical Sciences, Amsterdam Institute of Molecular and Life Sciences (AIMMS), Faculty of Science, Vrije Universiteit Amsterdam, Amsterdam, Netherlands.
  3. 3 IBM Research, Rüschlikon, Switzerland.
  4. 4 Algorithms for Reproducible Bioinformatics, Institute of Human Genetics, Faculty of Medicine, University Hospital Essen, University of Duisburg-Essen, Essen, Germany.
  5. 5 Medical Oncology, Harvard Medical School, Harvard University, Boston, MA, USA.
  6. 6 Algorithmic Bioinformatics, Department of Computer Science, Heinrich Heine University, Düsseldorf, Germany.

* Corresponding author. Email: mj.smit@vu.nl

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

US28は、βヘルペスウイルスヒトサイトメガロウイルス(HCMV)にコードされたGPCRであり、その発現は神経膠芽腫の増悪と関連し、HCMVの腫瘍原性に関与する。Bergkampらは、US28の発現が神経膠腫形成の強力なドライバーであるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)経路を介したシグナル伝達の亢進に関連することを明らかにした。US28はスフィンゴシンキナーゼ1を刺激し、それによってS1Pが生成され、S1Pに依存する形でSTAT3シグナル伝達が活性化されることで、神経膠芽腫細胞の増殖と生存が促進された。この研究は、宿主細胞のシグナル伝達の操作によりHCMVが神経膠芽腫の増悪を促進させる仕組みについて洞察を与えるものである。—Amy E. Baek

要約

ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)がコードするGタンパク質共役受容体(GPCR)US28は、一般的に予後不良をもたらす侵襲性脳腫瘍である神経膠芽腫の増悪の促進に関連する。本稿でわれわれは、US28が、神経膠芽腫の発がん経路を刺激する生理活性脂質であるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)に媒介されるシグナル伝達を促進することによって、U251神経膠芽腫細胞の悪性度を高めることを明らかにした。US28を発現させると、S1Pを生成する酵素[スフィンゴシンキナーゼ1(SK1)]、S1P受容体[S1P受容体1(S1P1)]やS1P自体など、S1Pシグナル伝達軸の主要構成要素の量が増加した。S1Pシグナル伝達が亢進されると、神経膠芽腫細胞の増殖と生存が促進されたが、これはキナーゼAKTおよびCHK1、転写調節因子cMYCおよびSTAT3の活性化と、PP2Aのがん性阻害因子(CIP2A)の量の増加によって、いくつかのフィードフォワードシグナル伝達ループが駆動されたためであった。S1Pシグナル伝達を阻害すると、US28の増殖性および抗アポトーシス性の作用が抑制された。また、US28は、HCMV感染細胞においても、S1Pシグナル伝達軸を活性化させた。この研究は、US28に媒介される神経膠芽腫の増悪に関与するフィードフォワードシグナル伝達におけるS1PおよびCIP2Aの中心的役割を明らかにするものである。

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