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PI3K-C2βはmTORC1シグナル伝達と血管新生増殖を制限する

PI3K-C2β limits mTORC1 signaling and angiogenic growth

Research Article

SCIENCE SIGNALING
28 Nov 2023 Vol 16, Issue 813
[DOI: 10.1126/scisignal.adg1913]

Piotr Kobialka1, †, Judith Llena1, †, Nerea Deleyto-Seldas2, Margalida Munar-Gelabert1, Jose A. Dengra1, Pilar Villacampa1, Alba Albinyà-Pedrós1, Laia Muixi1, Jorge Andrade3, 4, Hielke van Splunder1, Ana Angulo-Urarte1, Michael Potente3, 4, Joaquim Grego-Bessa1, Sandra D. Castillo1, Bart Vanhaesebroeck5, Alejo Efeyan2, Mariona Graupera1, 6, 7, *

  1. 1 Endothelial Pathobiology and Microenvironment Group, Josep Carreras Leukaemia Research Institute (IJC), 08916 Badalona, Barcelona, Catalonia, Spain.
  2. 2 Metabolism and Cell Signaling Laboratory, Spanish National Cancer Research Center (CNIO), Melchor Fernandez Almagro 3, Madrid 28029, Spain.
  3. 3 Angiogenesis & Metabolism Laboratory, Berlin Institute of Health at Charité-Universitätsmedizin Berlin, 10178 Berlin, Germany.
  4. 4 Max Delbrück Center for Molecular Medicine in the Helmholtz Association, 13125 Berlin, Germany.
  5. 5 Cancer Institute, Paul O'Gorman Building, University College London, WC1N 1EH London, UK.
  6. 6 ICREA, Institució Catalana de Recerca i Estudis Avançats, Pg. Lluís Companys 23, 08010 Barcelona, Spain.
  7. 7 CIBERONC, Instituto de Salud Carlos III, Av. de Monforte de Lemos, 5, 28029 Madrid, Spain.

* Corresponding author. Email: mgraupera@carrerasresearch.org

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

新たな血管を形成する過程である血管新生を防ぐことは、特定の病的状態においてきわめて重要である。Kobialkaらは、ホスホイノシチドキナーゼのPI3K-C2βが、内皮細胞のサイズを制限する作用をもつことを見出した。発生過程での血管新生において、キナーゼ欠損型のPI3K-C2βを発現するマウスでは、内皮細胞の増殖または遊走の増加によってではなく、内皮細胞が大きくなることによって、血管が拡張した。多タンパク質複合体のmTORC1は栄養素の利用性を細胞増殖に結び付け、PI3K-C2βが不活性化すると、mTORC1のリソソームへの局在が促進され、活性が高まった。したがって、PI3K-C2βはmTORC1活性を抑制して、血管新生を制限する。—Wei Wong

要約

ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)は、細胞内のイノシトール脂質をリン酸化して、シグナル伝達と細胞内小胞輸送を調節する。哺乳類には8つのPI3Kアイソフォームがあり、そのうちクラスI PI3KαとクラスII PI3K-C2αは血管の発生に不可欠である。また、クラスII PI3K-C2βは内皮細胞に豊富に存在する。われわれは、in vivoおよびin vitroの手法を用いて、PI3K-C2βが、内皮のmTORC1シグナル伝達を制限することによって、血管増殖のきわめて重要な調節因子となることを見出した。キナーゼ不活性型のPI3K-C2βを発現するマウスでは、血管拡張が認められたが、それに応じた内皮細胞の増殖または遊走の変化はみられなかった。その代わり、PI3K-C2βの不活性化により、とくに血管新生の発芽領域において、内皮細胞のサイズが増大した。機構的には、異常に大きなサイズのPI3K-C2β変異内皮細胞は、mTORC1の活性化により生じ、この活性化が細胞の増殖を支えていることをわれわれは示した。これと一致して、mTORC1をラパマイシンにより薬理学的に阻害すると、PI3K-C2β変異マウスの血管の形態形成が正常化した。総合すると、これらの結果は、PI3K-C2βが内皮シグナル伝達のきわめて重要な決定因子であることを明らかにし、血管新生増殖におけるmTORC1調節の重要性を示している。

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