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PD-1は免疫シナプスにおいて、そのシグナル伝達モチーフとは独立してT細胞のアクチンリモデリングを抑制する

PD-1 inhibits T cell actin remodeling at the immunological synapse independently of its signaling motifs

Research Article

SCIENCE SIGNALING
28 Nov 2023 Vol 16, Issue 813
[DOI: 10.1126/scisignal.adh2456]

Noémie Paillon1, 2, Violette Mouro1, 2, Stéphanie Dogniaux1, Mathieu Maurin1, Juan-José Saez Pons1, Hermine Ferran1, 2, Laurence Bataille1, Andrés Ernesto Zucchetti1, Claire Hivroz1, *

  1. 1 Institut Curie, PSL Research University, INSERM, U932 "Integrative analysis of T cell activation" team, Paris, France.
  2. 2 Université Paris Cité, 75005 Paris, France.

* Corresponding author. Email: claire.hivroz@curie.fr

Editor's summary

受容体であるPD-1にそのリガンドが結合すると、T細胞受容体を介して刺激されるT細胞の活性化が阻害される。この作用の軽減が、抗腫瘍免疫を促進するチェックポイント阻害薬の基本原理である(AcharyaとKumariによるFocusを参照)。Paillonらは画像技術を用いて、PD-1シグナル伝達が、T細胞内のチロシンベースのシグナル伝達モチーフとは独立のしくみでアクチン細胞骨格のリモデリングを抑制することで、T細胞とその標的細胞の間の免疫シナプスの形成を阻害したことを明らかにした。これらの知見は、PD-1が免疫応答を制御する、もう1つの機構を示唆している。
—John F. Foley

要約

受容体であるプログラム細胞死分子1(PD-1)にそのリガンドであるPD-L1およびPD-L2が結合すると、T細胞を介した免疫応答が阻害される。このようなシグナル伝達の遮断により、PD-1を標的とする免疫療法の臨床的効果が得られる。本稿でわれわれは、PD-1を介する阻害の根底にある機構を調べた。T細胞の機能には動的なアクチンリモデリングが重要であるため、われわれは、T細胞と抗原提示細胞(APC)または標的細胞の間の接点となる免疫シナプスにおける、アクチンリモデリングに対するPD-1結合の影響を明らかにした。PD-1+ Jurkat細胞または初代培養したヒトCD8+細胞傷害性T細胞と、T細胞活性化抗体を提示しPD-L1陽性または陰性であるAPC細胞との免疫シナプスの形成を、顕微鏡を用いて解析した。PD-L1とPD-1の結合により、抗体を介した活性化により誘導されるT細胞の伸展が阻害された。これは、免疫シナプスにおける、F-アクチンが密な遠位の葉状仮足の網目状構造およびArp2/3複合体(分岐アクチンの形成を媒介している)の消失を特徴としていた。PD-1により誘導されるアクチンリモデリングの抑制は、APCとの接触時の特徴的なT細胞の変形、および細胞傷害性顆粒の放出も阻害した。われわれは、アクチンリモデリングに対してPD-1が作用するためには、PD-1の共抑制作用を媒介すると考えられるチロシンベースのシグナル伝達モチーフが不要であることを明らかにした。今回の研究により、シグナル伝達モチーフに依存しないアクチン細胞骨格ダイナミクスの制御に依存するという、これまで認識されていなかった、PD-1を介したT細胞活性抑制の機構が浮き彫りとなった。

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