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TAOK3によるSHP-1分解の誘導がTCR刺激に対するT細胞の応答性を確実なものにする

The induction of SHP-1 degradation by TAOK3 ensures the responsiveness of T cells to TCR stimulation

Research Article

SCIENCE SIGNALING
2 Jan 2024 Vol 17, Issue 817
[DOI: 10.1126/scisignal.adg4422]

Alexandre Poirier1, 2, João Vitor Silva Ormonde3, Isabelle Aubry1, 4, Belma Melda Abidin1, Chu-Han Feng1, 5, Zuzet Martinez-Cordova1, 5, Ana Maria Hincapie1, 4, Chenyue Wu5, Luis Alberto Pérez-Quintero1, Chia-Lin Wang6, Anne Claude Gingras7, 8, Joaquín Madrenas9, Michel L. Tremblay1, 4, 10, *

  1. 1 Goodman Cancer Institute, McGill University, Montréal, H3A 1A3 Québec, Canada.
  2. 2 Faculty of Medicine and Health Sciences, Division of Experimental Medicine, McGill University, Montréal, Québec, Canada.
  3. 3 Brazilian Biosciences National Laboratory, Center for Research in Energy and Materials (LNBio - CNPEM), Campinas, São Paulo, Brazil.
  4. 4 Department of Biochemistry, McGill University, Montréal, Québec, Canada.
  5. 5 Department of Microbiology and Immunology, McGill University, Montréal, Québec, Canada.
  6. 6 NYU Langone Medical Center, 660 1st Ave, Fl 5, New York City, NY 10016, USA.
  7. 7 Lunenfeld-T anenbaum Research Institute, Mount Sinai Hospital, Toronto, Canada.
  8. 8 Department of Molecular Genetics, University of Toronto, Toronto, Canada.
  9. 9 Department of Medicine, David Geffen School of Medicine at UCLA, Los Angeles, CA 40095, USA.
  10. 10 Faculty of Medicine, McGill University, Montréal, Québec, Canada.

* Corresponding author. Email: michel.tremblay@mcgill.ca

Editor's summary

ホスファターゼSHP-1は、T細胞受容体(TCR)の下流に位置するいくつかの構成要素を脱リン酸化することから、TCRシグナル伝達の重要な負の制御因子となっている。Poirierらは、キナーゼTAOK3がSHP-1のホスファターゼドメインにあるスレオニン残基をリン酸化し、SHP-1のユビキチン化と分解を引き起こすことによって、TCRシグナル伝達を促進することを明らかにした。マウスCD4+ T細胞およびヒトT細胞株でTAOK3を欠失させると、持続性とリガンド依存性のいずれのTCRシグナル伝達も抑制された。このようにTAOK3は、SHP-1の存在量を調節することによってT細胞活性化の閾値を設定している。—Annalisa M. VanHook

要約

Thousand-and-one-amino acid kinase 3(TAOK3)は、キナーゼのSTE-20ファミリーに属するセリンスレオニンキナーゼである。TAOK3の欠失は、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達を抑制し、近位TCRシグナル伝達の主要な負の制御因子であるチロシンホスファターゼSHP-1とTCRシグナル伝達のコア複合体の構成要素であるキナーゼLCKとの相互作用を促進する。本稿でわれわれは、マウスモデルとヒト細胞株を用いて、TAOK3がSHP-1とLCKの相互作用を抑制する機構を調べる。TAOK3の欠失は、持続性およびリガンド依存性のTCRシグナル伝達を減弱させることによって、ナイーブCD4+ T細胞の生存率を減少させた。マウスT細胞では、Taok3は、Taok3遺伝子の量とTaok3キナーゼ活性に依存する形で、TCR活性化に応答したインターロイキン2(IL-2)の分泌を促進した。Taok3−/− T細胞におけるTCR脱感作は、Shp-1量の増加によって引き起こされ、Shp-1を薬理学的に阻害すると、Taok3−/− T細胞の活性化ポテンシャルは回復した。TAOK3はSHP-1のホスファターゼドメインにあるスレオニン394をリン酸化し、それによってSHP-1のユビキチン化とプロテアソーム分解が促進された。TAOK3の欠失は、SHP-1のスレオニン394に相当する残基のないSHP-2の存在量には影響しなかった。このように、TAOK3によるSHP-1量の調節が、TCRシグナル伝達のレオスタットとして機能し、Tリンパ球の活性化閾値を決定している。

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