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細胞膜結合型アンドロゲン受容体は骨芽細胞および前立腺がん細胞において核内アンドロゲンシグナル伝達を促進する

A plasma membrane—associated form of the androgen receptor enhances nuclear androgen signaling in osteoblasts and prostate cancer cells

Research Article

SCIENCE SIGNALING
30 Jan 2024 Vol 17, Issue 821
[DOI: 10.1126/scisignal.adi7861]

Hema Kalyanaraman, Darren E. Casteel, Shyamsundar Pal China, Shunhui Zhuang, Gerry R. Boss, Renate B. Pilz*

Department of Medicine, University of California, San Diego, La Jolla, CA 92093, USA.

* Corresponding author. Email: rpilz@ucsd.edu

Editor's summary

アンドロゲンは、骨芽細胞の増殖と分化を刺激することによって骨形成を促進する。Kalyanaramanらは、アンドロゲンジヒドロテストステロン(DHT)がマウス骨芽細胞において細胞質型と膜結合型の両方のアンドロゲン受容体(AR)を活性化することを明らかにした。膜結合型ARの活性化がシグナル伝達経路の引き金となり、それによってリガンドに誘導される細胞質型ARの核内移行が促進され、骨芽細胞の増殖と分化に必要な遺伝子発現が最高レベルに達した。この機構は、DHTに依存したヒト前立腺がん細胞の増殖にも必要であったことから、膜ARシグナル伝達による核内AR機能の促進が複数の生理学的状況で生じうることが示唆されている。—Annalisa M. VanHook

要約

アンドロゲンが細胞質内のアンドロゲン受容体(AR)に結合すると、ARの核内移行が誘導され、ARは核内で標的遺伝子の発現を制御する。本稿でわれわれは、アンドロゲンが細胞膜結合型シグナル伝達ノードを迅速に活性化させ、核内AR機能を促進することを明らかにした。マウス初代培養骨芽細胞において、膜結合型ARにジヒドロテストステロン(DHT)が結合すると、細胞膜結合型タンパク質キナーゼG2型(PKG2)が刺激され、ERKなどの複数のキナーゼが活性化される。ARのSer515ERKによってリン酸化されると、ARの核内蓄積量が増加し、転写因子β-カテニンをコードするCtnnb1のプロモータへのARの結合が促進された。雄マウス骨芽細胞とヒト前立腺がん細胞では、DHTはβカテニン標的遺伝子のほかに、それぞれCtnnb1CTNN1Bの発現を誘導し、骨芽細胞の増殖、生存、分化と前立腺がん細胞の増殖をPKG2に依存する形で刺激した。βカテニンは骨格恒常性の主要制御因子であることから、これらの結果は、骨芽細胞特異的PKG2欠損マウスにおいて報告されている雄特異的骨粗鬆症表現型を説明するものであり、PKG2依存性ARシグナル伝達がin vivoでの骨量の維持に不可欠であることを意味している。今回の結果は、薬理学的に広く使用されているシルデナフィルなどのPKG活性化因子が、骨粗鬆症の男性患者およびエストロゲン欠乏性骨粗鬆症の女性患者には有益となるが、前立腺がん患者には有害となる可能性を示唆している。

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