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シナプス後足場タンパク質PSD-95を標的にするとBDNFシグナル伝達が増強されてマウスのうつ様行動が軽減される

Targeting the postsynaptic scaffolding protein PSD-95 enhances BDNF signaling to mitigate depression-like behaviors in mice

Research Article

SCIENCE SIGNALING
30 Apr 2024 Vol 17, Issue 834
[DOI: 10.1126/scisignal.adn4556]

Xin Shi1, †, Xiao-zhong Zhou1, 2, †, Gang Chen3, †, Wei-feng Luo1, †, Chengyu Zhou4, Tian-ju He1, Mandar T. Naik5, Qin Jiang6, *, John Marshall5, *, Cong Cao1, *

  1. 1 Clinical Research Center of Neurological Disease, Second Affiliated Hospital of Soochow University, Institution of Neuroscience, Soochow University, Suzhou 215123, China.
  2. 2 Department of Orthopedics, Second Affiliated Hospital of Soochow University, Suzhou 215004, Jiangsu, China.
  3. 3 Department of Neurosurgery, First Affiliated Hospital of Soochow University, Suzhou 215006, Jiangsu, China.
  4. 4 Department of Neuroscience, Case Western Reserve University, Cleveland, OH 44106, USA.
  5. 5 Department of Molecular Biology, Cell Biology & Biochemistry, Brown University, Providence, RI 02912, USA.
  6. 6 Affiliated Eye Hospital, Nanjing Medical University, Nanjing 210029, China.

* Corresponding author. Email: jqin710@vip.sina.com (Q.J.); john_marshall@brown.edu (J.M.); caocong@suda.edu.cn (C.C.)

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

神経栄養因子BDNFとその受容体TrkBには、抗うつ作用がある。このリガンド・受容体ペアの直接的な調節因子は治療での利用可能性が制限されていることから、Shiらは代わりに、細胞内でBDNF-TrkBシグナル伝達を構造的に支えるようにデザインされたペプチドの効果を検証した。シナプス後足場タンパク質PSD-95に結合するSyn3およびCN2097は、海馬ニューロンにおいてTrkB複合体の形成とBDNFに誘導される経路の活性化を促進した。Syn3と、比較的程度は低いものの、CN2097は、マウスの慢性ストレスによるニューロン作用とうつ様行動作用を反転させたことから、PSD-95を標的にすることで抗うつ治療につながる可能性があることが示された。—Leslie K. Ferrarelli

要約

脳由来神経栄養因子(BDNF)に媒介されるシグナル伝達は、シナプス後足場タンパク質PSD-95によって支えられており、抗うつ作用を有する。逆に、臨床的なうつ状態には、BDNFシグナル伝達の低下が関連している。われわれは、PSD-95に結合するペプチド模倣化合物が、海馬においてBDNF受容体TrkBによるシグナル伝達を促進し、マウスのうつ様行動を軽減することを明らかにした。この化合物CN2097およびSyn3は、いずれもPSD-95のPDZ3ドメインに結合するほか、Syn3はPSD-95タンパク質のα-ヘリックス領域にも結合する。Syn3は、2つのストレス誘導性うつ病マウスモデルにおいて、うつ様行動を低減させた。CN2097にも同様の効果がみられたが、その作用はより弱かった。海馬ニューロンでは、Syn3の投与によってTrkB-Gαi1/3-PSD-95複合体の形成が促進され、下流のPI3K-Akt-mTORシグナル伝達が増強された。慢性軽度ストレス(CMS)に曝されたマウスでは、海馬において、PI3K-Akt-mTORシグナル伝達、樹状突起の複雑さ、樹状突起のスパインの密度、オートファジーにCMS誘導性のうつ関連の変化が生じるが、Syn3の全身投与によって、これらの変化は反転され、うつ様行動が軽減された。海馬ニューロンのGαi1/3をノックアウトすると、Syn3の治療作用が阻害されたことから、これらの作用がTrkB経路に依存していることが示された。これらの知見は、PSD-95-TrkB複合体の形成を誘導する化合物が、うつ状態を軽減するための治療薬となる可能性があることを示している。

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