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ドパミン作動性システムがネプリライシンに媒介される脳内のアミロイドβの分解を促進する

The dopaminergic system promotes neprilysin-mediated degradation of amyloid-β in the brain

Research Article

SCIENCE SIGNALING
6 Aug 2024 Vol 17, Issue 848
[DOI: 10.1126/scisignal.adk1822]

Naoto Watamura1, *, †, Naomasa Kakiya1, †, Ryo Fujioka1, Naoko Kamano1, Mika Takahashi1, Per Nilsson2, Takashi Saito3, 4, Nobuhisa Iwata5, Shigeyoshi Fujisawa6, Takaomi C. Saido1, *

  1. 1 Laboratory for Proteolytic Neuroscience, RIKEN Center for Brain Science, 2-1 Hirosawa, Wako, Saitama 351-0198, Japan.
  2. 2 Department of Neurobiology, Care Sciences and Society, Center for Alzheimer Research, Division for Neurogeriatrics, Karolinska Institutet, 171 64, Solna, Sweden.
  3. 3 Department of Neurocognitive Science, Institute of Brain Science, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences, Nagoya, Aichi 467-8601, Japan.
  4. 4 Department of Neuroscience and Pathobiology, Research Institute of Environmental Medicine, Nagoya University, Nagoya, Aichi 464-8601, Japan.

  5. 5 Department of Genome-based Drug Discovery & Leading Medical Research Core Unit, Graduate School of Biomedical Sciences, Nagasaki University, Nagasaki, 852-8521, Japan.

  6. 6 Laboratory for Systems Neurophysiology, RIKEN Center for Brain Science, 2-1 Hirosawa, Wako, Saitama 351-0198, Japan.

  7. * Corresponding author. Email: naoto.watamura@riken.jp, n.watamura@ucl.ac.uk (N.W.); takaomi.saido@riken.jp (T.C.S.)
  8. † These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

脳内のアミロイドβ蓄積は、アルツハイマー病における進行性の認知機能障害に関連する。Watamuraらは、パーキンソン病の症状の治療に広く用いられる治療がアミロイドβの分解も誘導することを明らかにした。マウスにおいて、脳内でドーパミンが放出されると脳内の作業記憶中枢で特異的にアミロイドβを分解する酵素であるネプリライシンの存在量と活性が増大した。レボドパはこれらの作用を誘導し、高齢マウスとアルツハイマー病モデルマウスの認知機能を改善させたことから、アルツハイマー病患者の治療法としてこの手法がさらに探究される可能性が示された。—Leslie K. Ferrarelli

要約

脳内におけるアミロイドβ(Aβ)の蓄積は、神経機能を低下させ、アルツハイマー病(AD)における認知機能の低下に関与する可能性がある。本稿でわれわれは、ドーパミンおよびドーパミン前駆体レボドパ(別名l-DOPA)が脳内のAβ分解を誘導することを明らかにした。マウスにおいて、化学遺伝学的手法によって腹側被蓋野(VTA)の神経細胞からのドーパミン放出を活性化させると、ネプリライシンに依存する形で、Aβ分解酵素であるネプリライシンの存在量と活性が増大し、前頭前皮質のAβ蓄積量が減少した。高齢マウスでは前方部皮質のドーパミン量とネプリライシン量が低下しており、同様の低下がADモデルマウスでも顕著にみられた。ADモデルマウスにレボドパを投与すると、Aβ蓄積量が減少し、認知機能が改善された。これらの観察結果は、ドーパミンが脳領域特異的にネプリライシン依存性のAβ分解を促進することを実証していることから、ドーパミン関連戦略がAD病理のこの病態の治療法となる可能性を示唆している。

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